マタニティーハラスメント | BLOG | EAPとメンタルヘルスの事なら、みらい総合心理研究所へ

  • 11:00~18:00(最終受付 17:00)

  • 045-228-7171
  • 何でもお問い合わせ下さい

マタニティーハラスメント

2015/02/01
ロゴ

みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

K子、27歳、事務職、既婚

<前号の続き>

安定したK子さんは6カ月前に結婚をしました。

友人の紹介で出会ってから結婚までのプロセスは、K子さんにとって、大きな波が何度も襲い掛かってくるようなものでした。

その度に立ち止り、考え込み、また一歩踏み出すという作業でした。その結果、見事結婚までたどり着くことが出来たのです。

K子さんも人間的に成長していますが、変化を好みません。結婚をして、夫と話し合い、子供は作らない選択をしました。

結婚6カ月が過ぎ、新しい生活にも慣れてきた頃、上司から「子供はまだなの?」と聞かれ、長い沈黙の後「はい」と答えましたが、何かふいに落ちず、帰宅後夫に報告をしました。

夫は、「あー、世間ってそんなものだよ。気にしなくていいんじゃないの?」とさらりとK子さんに言葉を投げかけました。

翌日、お昼休みに先輩の女性から「子供ができたら教えてね」と言われたのを皮切りに、食事をしていた数人の女性から、次々と子どもが産まれる時の話や、産休、育休制度の話、保育園探しの事にまでおよびました。

その日以来、お昼は子育てをしながら仕事をする辛さや、嫁姑の関係、姑の子育ての関わり、仕事中に保育園から急病なので迎えに来るようにと電話が来ること等、子育に関わる話が続くようになりました。

上司から仕事の指示を受け、席に着こうとすると、「妊娠したらすぐに報告するように、産休を取るなら仕事上の事もあるので早めに報告してほしい。退職するのなら1カ月前でもいいけど、そうじゃないんだよね。育休を取るだろうし、部署異動も考えなくてはいけないからね、頼むよ。」とポンと肩を叩き自分の席に着いたのです。

K子さんにそのような新たな試練が待ち受けているとは思いもよらなかったのです。

結婚=子供と考えている人達が多くいる中で、K子さんは、夫婦の選択は間違えていたのではないかと、不安になりました。

そんな中、大学時代の友人で結婚3年目のY子さんと食事をすることになりました。

K子さんは、子供のいないY子さんに、子どもを産まないと決めた自分の気持ちを理解してくれるのでは?と期待していました。

ところが、淡い期待はあった瞬間から消えてしまいました。

Y子さんは、不妊治療を初めて6カ月になり、子供が出来ない悩みを訴えてきました。夫に申し訳ないという気持ちや、子供のできない自分に対して嫌悪感を持っていること、今月こそ妊娠しているという期待をもち、そして、裏切られた失望感でどん底に落ち込んでしまう、と、K子さんに泣きながらY子さんは言いました。

子供が欲しくて努力しているY子さんの言葉が、K子さんの胸に突き刺さります。子供が欲しいができない悩みの辛さを実感しました。

「子供を産まない」と決めたことを言えなくなってしまったのです。

帰って夫にY子さんの事情を話すと、「結婚したら子供ができて、あたり前で、夫婦の在り方を考えるより、子供を優先して考えていて、それに執着し過ぎているんじゃないの?僕達は、君の事情を僕も理解した上で、決めたことなんだから自信を持っていこうよ。」と言われました。

K子さんは母に「子育てをして親も成長していくんだよ」と言われたことを強く信じていたのです。裏を返せば、「子供のいない親は一人前ではないんだ」とも考えていました。

強いて言えば、K子さんのお母さんは「あなたを苦労して育てた私は立派な母親でしょ」と、訴えているようにも聞こえてくるのでした。

母の生き方に憧れもありましたが、夫が伝えてきた言葉で、母と自分は違ってよいのだ、と確信を持つことが出来ました。

本当の意味で母からの自立が出来たようです。

 

その後、お昼休みの妊娠、出産についてのおしゃべりにも敏感にならず、軽く相槌を打って過ごしていました。

また、上司から言われた言葉も、プライベートな話ではありますが、組織上の中で働いて行く以上は一般論として考えれば当然な事だ、と考えられるようになりました。