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もっと気楽に生きるために

2015/01/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

●マタニティーハラスメント

K子、27歳、事務職、既婚

K子さんは、大学卒業後、現代の会社に入社。1年前は教育中、新人扱いですから、仕事で指示されたことを成し遂げるだけで、評価は上がりました。

目立たないが、仕事は手を抜かず、上司からの信頼も得ていました。

入社2年目からは新入社員の教育担当の仕事があります。新人の研修も修了し、K子さんの部に新人のA子さんが配属されました。

A子さんは明朗で活発、体育会系で声も大きく、存在感があります。K子さんの職場も急に明るくなり、注目されるのはいつもA子さんでした。

A子さんが配属されて、10カ月が過ぎた頃からA子さんの居眠りが多くなっていることに気が付いたK子さんは、A子さんに注意をしました。

しかし、一向に改善されません。「すいません、気を付けます」とは言いますが、頼んである仕事も進まず、パソコンのマウスを持ったまま、指は動いてないのです。

K子さんは真面目で、正義感、倫理感が強く、完璧さを求めますから、仕事中に居眠りをするA子さんを許せないし、ストレスにもなってきました。

思い余って、上司に相談すると「A子さんは社内でも人気者だから、引っ張りだこで忙しいんじゃないのか?新人だから大目に見てやってよ。A子さんの仕事はK子さんがカバーしてくれればいいよ。」と、取り合ってくれませんでした。

K子さんは、このころから体調を崩し始めました。

母はK子さんを気遣い、何とか病院に行くようにすすめますが、治療することで治ってしまう恐怖から病院へはいけません。

病気の辛さがあるのなら、治すことで健康を取り戻す努力をしますが、K子さんは治ってしまったら自分はどのように行動して良いか分からなくなってしまい、また、新たな悩みが増えてしまうと考えるのです。

今までのように、辛いけれど自分なりのルール・手順がありますから、手引書に添って行動する方が安全だと言います。

変化がとても怖いのです。しかし、体調が悪く休む事が多くなり、上司から病院へ行くように言われた事で、やっと決心がつきました。

心療内科へ行き、カウンセリングを勧められました。

 

K子さんがカウンセリングに来所されてから3年目になりました。

当初は不安な思考をしていました。鍵、ガスの確認、洋服のチェック、家を出るまでに要する時間は、起床してから3~5時間です。

「通勤途中でも後を振り返る癖があります。昨日の確認メモや、自分をバカにするような物を落としていないかと考えるからです。

自分の評価は低く、恥をかかないように、迷惑をかけないように、ひっそりと生きてきたいといつも小さな声で伝えてきました。

小さいころから手のかからない、大人しい子だと周りから言われてきたようです。K子さんの母親は、社交家で、仕事をしながら家事をテキパキとこなして行くような活発な女性で、K子さんは母の事が羨ましいと思いつつも、母のようにうまく出来ない自分に苛立ちを持っていました。

いつしか劣等感が強くなり、思春期は人と話すことが苦手になり、極度の赤面症になり、人前に出ることを避けるようになりました。

高1の頃、体育の授業が終わり、教室に戻ると黒板に「K子は、人と話すと顔が真っ赤になるぞー!超面白い!」と書いてありました。

鞄を持って逃げるように教室を出て、帰宅途中自殺まで考えました。

母に伝えても、「自分の自信さえ持てれば良いことだ。赤面症なんて思春期の病気なんだから、もう少し我慢しなさい」と、言うばかりだったので、いつしか自分の気持ちを母親に伝えることをやめてしまいました。

確かに思春期は今までにない事を経験する事で、どのように考えて良いのか、どう行動して良いのか分からない事ばかりです。

思春期の乗り越えかたしだいで、人生は決まるのかもしれません。

K子さんは対人不安を抱えたまま、大学を卒業しました。しかし、手洗いに1時間、シャワーに2時間もかかります。

また、過食症にもなり、大量な弁当を購入します。食後はトイレで吐き、下剤も使用していました。

このころのK子さんは、情緒が安定せず、イライラして母にあたることが多く、暴力をふるう事もありました。

上司にA子さんの件で相談した時は、自分を拒否されたと考え、この会社には私は必要のない存在なんだ、と考え、孤独感、罪悪感で一杯でした。

医師からは、休職することを勧められ、休職をしました。その後、3カ月で復職しました。

カウンセリングは当初月2回ペースでしたが、今年で3年が経過し、現在は月一回のペースで来所しています。

認知行動療法で、現実検討するような思考訓練をしました。鍵、ガスの確認、手洗い、シャワーの時間も少なくなってきました。

過食も以前のような大量食いは無くなり、下剤も使用していません。

勝手に人の気持ちを推測し、断定してしまう癖に気が付き始めると、推測していることを書き出し、真実か検討することが出来ています。

自己評価も少しは上がってきており、最低な自分から、「目立たないけれど、こんな自分でも生きていける」という確信は持っています。

 

安定したK子さんは6カ月前に結婚をしました。

友人の紹介で出会ってから結婚までのプロセスは、K子さんにとって、大きな波が何度も襲い掛かってくるようなものでした。

その度に立ち止り、考え込み、また一歩踏み出すという作業でした。その結果、見事結婚までたどり着くことが出来たのです。

K子さんも人間的に成長していますが、安定思考ですから変化を好みません。結婚をして、夫と話し合い、子供は作らない選択をしました。

結婚6カ月が過ぎ、新しい生活にも慣れてきた頃、上司から「子供はまだなの?」と聞かれ、長い沈黙の後「はい」と答えましたが、何かふいに落ちず、帰宅後夫に報告をしました。

夫は、「あー、世間ってそんなものだよ。気にしなくていいんじゃないの?」とさらりとK子さんに言葉を投げかけました。

翌日、お昼休みに先輩の女性から「子供ができたら教えてね」と言わたのを皮切りに、食事をしていた数人の女性から、次々と子どもが産まれる時の話や、産休、育休制度の話、保育園探しの事にまでおよびました。その日以来、お昼は子育てをしながら仕事をする辛さや、嫁姑の関係、姑の子育ての関わり、仕事中に保育園から急病なので迎えに来るようにと電話が来ること等、子育に関わる話が続くようになりました。

上司から仕事の指示を受け、席に着こうとすると、「妊娠したらすぐに報告するように、産休を取るなら仕事上の事もあるので早めに報告してほしい。退職するのなら1カ月前でもいいけど、そうじゃないんだよね。育休を取るだろうし、部署異動も考えなくてはいけないからね、頼むよ」とポンと肩を叩き自分の席に着いたのです。

K子さんにそのような新たな試練が待ち受けているとは思いもよらなかったのです。

結婚=子供と考えている人達が多くいる中で、K子さんはどのように考え、乗り越えるのでしょう。