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管理職は心を病む部下にどう対応したらいいのか(その2) (続)部下を追い詰める上司

2013/11/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

前号のあらすじ

Aさん(36歳:独身)は勤続14年。入社以来、営業部門で高い評価を得てきました。そして1年前、突然、技術部門へ異動しました。

技術部門の仕事はかなり専門的で今までとは全く異なる分野のため、Aさんは戸惑うことの連続でした。

そんなある日、上司から「成果が全くみられない」ときびしく叱責されてしまいました。

 

Aさんは、その後、不眠症状があらわれ、症状は急速に悪化。ついに3カ月の休職に到りました。

そして3カ月後、出勤しなければならないと意識しはじめたときに、上司から電話がありました。

「具合はどうか?休職期間がまもなく終わるので早く出てきてほしい」

こういわれたAさんは、上司から威圧感を感じとり、さらに落ち込んでしまいました。

そうして、医師から休職延長の診断書が再提出され、私は、人事担当者と話し合うことになりました。

 

人事担当者が語ったAさんの上司

Aさんの上司であるBさん(53歳)は、4年前に現場の支店長から本社の技術部長として異動してきました。

支店長在籍中の部下指導はきびしく、中にはメンタル不全になって退職や休職者が目立っていました。

人事部は事態を重視し、メンタル不全者の面接を実施しました。名目上は、一身上の都合で退職ということでしたが、中にはBさんのきびしい叱責で、うつ病を発症し退職した人もいたそうです。

Bさんが4年前に本社に異動したのは、部下に「メンタル不全者が多い」事もあったようです。

 

Aさんの上司とのカウンセリング

Bさんから「Aさんの事でカウンセラーと面接をしたい」という要望が人事担当者にありました。

私はAさんの了解をとり、上司であるBさんとのカウンセリングを行ないました。

Bさんは態度も口調も穏やかで、部下を追い詰めるような厳しさは感じられませんでした。

Aさんに対する上司としての印象を伺うと、

①営業にいた時のAさんは、評価が非常に高く、彼には期待していた。

②仕事に対しても積極的で、一人でこなさなければならない専門分野ではあるが、熱意を感じていた。

③私は社長からのミッションがあり、当たり前に成果を出すことを求められている。Aさんは、その一役を担える器だと思っていた。

④入社して14年なので、過去の経験を生かし、新しい分野にチャレンジしてほしかった。

⑤彼は職人気質で、私と性格が似ており、厳しい環境でも乗り越えることができると思っていた。

⑥優秀なサラリーマンは劣悪な環境でも乗り越えなければ成長できない。

 

Bさんの仕事に対する考え方

⑦私の時代は今より厳しかった。今のサラリーマンは手取り足取り教えなければついてこないが、甘えるなといいたい。いちいち教えている時間はない。自分で学ぶ力がほしい。

⑧私は上司から殴られ、暴言を吐かれても歯をくいしばって我慢し、今の地位を得た。一度勤めた会社を退職するなんて考えたこともない。

退職するような社員は会社にあわないのだから、辞めることはやむをえない。

⑨私は家が貧しく父が何度も転職し、そのたびに母が苦労していたのを小さい頃から見てきた。

だから会社員になったとき、家族を路頭に迷わせることは絶対にしないと心に誓い、自分に厳しく言い聞かせてきた。

⑩Aさんが休職した理由が私の厳しい態度が原因だと聞き、正直Aさんに失望している。

⑪過去、私の部下が何人も退職したり、休職しているが、サラリーマンとして根性がないと思う。頑張りどころがない人は辞めた方が本人のためだと考えている。

 

以上が、Bさんとの話の大まかな内容でした。

Bさんが

「サラリーマンは根性がなければいけない」といわれる時は、自分の経験上の思いの強さが伝わってきました。

人は辛い経験を乗り越えた達成感があると、他人もそうあってほしいと考えます。それは間違いのない正論だと強く考え、個人個人の特性や、時代の変化は二の次になってしまいます。

Bさんには、生育歴から学んだ生き方や、現実に企業での辛いさまざまな困難を乗り切った自信があります。

しかし、今は時代が変化し、価値観が多様化しています。上司として柔軟に個々の部下を管理しなければなりません。

企業にとって「人材育成」は、損失を防ぐ大きな柱になっています。根性論だけでは通じない大きな役割が上司にはあるのではないかと思います。(つづく)