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管理職は心を病む部下にどう対応したらいいのか(その1) 部下を追い詰める上司

2013/10/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

営業部門から技術部門へ突然の異動

Aさん、36歳(独身男性)、勤続14年。入社以来、営業部門でそれなりの成果を上げ、高い評価を得てきました。そして1年前、突然、技術部門への異動を言い渡されました。

サラリーマンである以上、異動はつきもの、と本人は、割り切っていたのですが、今までの仕事とはまったく異なる分野のため、かなりの戸惑いがあったようです。

上司と先輩からは、

「分からないことがあったらいつでも聞いてほしい」

と言われましたが、前任者が突然の休職

だったため、引き継ぎはありません。

Aさんが担当する仕事は、かなり専門的で、はじめのころは何から手をつけたらよいのか整理がつかない状態でした。

「わからなければ聞いてくれ」といわれても、何をどう聞いたらいいのかさえもわからない状態でした。

 

上司の叱責

こうして半年がたちました。今の仕事に少しは慣れてきましたが、いまだにテキパキと仕事を処理するまでにはいたっていません。

そんなある日、前任者の残した書類を見ながら、お客様にどう対応したらいいのかを思案していたところ、上司から話があると会議室へ呼ばれました。

Aさんはまだ、今の仕事に戸惑うことも多く、今後のことも含めて上司に相談したかったのですが、その考えは甘かったようでした。

会議室では一方的にきびしく叱責されてしまいました。

「異動して半年も経っているのに成果が全くみられない」

「あなたには期待していたが、前の職場の評価者はどこを見ていたのか」

「あなたは給料をもらっているという自覚に欠けている」

「この職場は合っていないようだが、あと1カ月だけ待つので、形のある成果を出してほしい」

「それができないなら、自分の将来のことも含めて、もう一度見直して欲しい」

「私は社長からのミッションが重く、あなたの面倒まではみられない」

以上のような言葉を投げかけられました。

Aさんは何も反論できずに、黙って席に戻りました。

その日から、不眠の症状があらわれ、遅刻が目立つようになりました。

Aさんの症状は急速に悪化し、ついに、医師からは3カ月の要休職との診断が出るに至ります。

 

カウンセリングで浮上した上司とのやり取り

それからカウンセリングが始まりました。そこでは、上司とのやり取りが浮かび上がってきました。

上司に対するいらだち、悔しさ、怒りの感情を表出してのカウンセリングが続きます。

また、母の介護に追われていたことも判明しました。不眠が続いている中、夜11時と朝5時には車椅子の母をトイレに連れて行くこと、平日の日中はヘルパーさんの助けを借りていますが、休日は一日中介護で休息できていなかったこともわかりました。

Aさんは、兄弟がなく頼れるのはヘルパーさんだけで、上司からのストレスを解消できず一人で悩んでいました。

まもなく休職期間が満了というときにカウンセリングに来所されましたが、その日は上司から電話があったといいます。

そのやりとりを訊ねると、

「具合はどうか?休職期間がまもなく終わるので、早く出てきてほしい」

「私は会社に出たいのですが、カウンセラーが復職は難しいと言っています。やはり来月の出社は難しいです」

このように答えました、とばつの悪そうな表情でAさんは答えてくれました。

「やっぱり体調は良くないようですね。医師に今の体調を正直に話して、診断書を会社に提出して下さいね」

と伝えました。

Aさんは上司の電話を受けた後、更に落ち込み、うつ症状が強まってしまっていたのです。

翌日、人事担当者と話し合いましたが、Aさんの上司からはカウンセリングにクレームがきていたそうです。

「本人は出社したいと言っているのに、カウンセラーが出社するなと言っている。どういうことか!」

人事からは、実際の様子を聞きたいとの話でしたので、上司の電話が圧力となり本人は本音を言えず、カウンセラーのせいにしたこと、性格的に人の言いなりになるところがある為、上司の意向に添うような傾向があること、を伝えました。

「医師からも休職延長の診断書が昨日届きました。上司の威圧的な態度が原因なのですね」

と、人事担当者の見解です。

又、母の介護を一人で行っていることを伝えると、それは知らなかったとのことで、新たな検討課題になりました。

Aさんの異動は、前任者の突然の休職のためでしたが、実は、前任者も上司とのあつれきによる休職でした。

部下を追い詰めないために上司はどう対応すべきか、今後のカウンセリングの大きな検討課題です。(つづく)