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働く女性の心の病 (その6) 母と話すといつもケンカ

2013/06/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

B子さん(47)は大手企業の課長です。職場では、いつも穏やかな口調で周りからも信頼されています。しかし、最近は元気がありません。現在、母(84)と二人暮らしですが、ケンカが絶えません。

ある日の会話です。

「ただいまあ」

「あら、遅いわねえ。どうしてこんなに遅くなるの?」

「遅くなるって言ったでしょ!」

「いいえ、聞いてないわ」

「あら、言ったわよ。今朝出がけに」

「いいえ、私は聞いてませんよ」

「言いましたよ。今日は会議があるので夕食はすませてくるって!(本当に言ったのにと、腹が立ってくる)」

「私は知りませんよ。いいかげんなことを言ったらダメよ」

「もーお、お母さんたら、全くボケているんだから!」

「ぼけているなんて……。あなたこそ最近もの忘れひどいんじゃないの。トイレの電気を今朝も消し忘れていたわよ!」

「まさか!(記憶に全くない)

でも私は確かに今日は遅くなるから食事はいらないって言ったわよ!!」

「私は聞いていないし、ボケてもいないわよ!!」

母は涙を浮かべて、自分の部屋に引きこもってしまいました。

B子さんはいつものことと考え、母を無視して、翌日の会議資料の準備にとりかかりました。

しかし、母のことが気になり集中できません。母と話していると、どうしてこうなってしまうのか……。B子さんは、母のことで毎日悩んでいます。

 

5人姉妹の長女として生まれた母

B子さんの母の実家は自営業でした。両親は家業に忙しく、子供にかまっている暇がありませんでした。

そのため5人姉妹の長女で生まれた母は両親に甘えた記憶がありません。子供時代は、家の手伝いと妹たちの世話に追われる毎日でした。

多感な年ごろになると、母の妹(叔母)の養女となります。その結果、経済的には恵まれ、なに不自由なく暮らすことができました。

そして23歳で結婚。やがて一人娘のB子さんを出産すると、愛情をたっぷり注いで育てあげました。

 

過保護の母が重荷に

B子さんは、小学校までは母の期待通りに育ちました。しかし、成長するにつれてよその家庭と我が家の違いにとまどうようになります。

たとえば友だちの家庭では門限は20時なのに我が家は17時。B子さんは学校の部活をしたいのに、母は塾優先で譲りません。塾が終わると必ず母に連絡しなければならず、そうすると駅に母が迎えにくる毎日でした。

小学6年生のとき、友だち同士でディズニーランドへ行くことになりましたが、B子さんだけ母親同伴でした。

友だちから「これって過保護じゃない?」と指摘され、このころから母の存在がうっとうしく思うようになりました。

母はいつも周りの女子と比較して、口癖のようにいつも言います。

「あんな風になってはいけません」

「あんな言い方はバカにされますよ」

「○○ちゃんの洋服は派手すぎるわね」

そして、教室でのささいなことでも、娘が差別されたと、学校に直談判。作文の宿題がでると母がかわりに書きました。

私ほど子供に愛情深い親はいないと本人は信じきっているのです。

B子さんは母のこれまでの過保護ぶりを涙ながらに話してくれました。

 

母を否定し、自分をも否定

このような母に育てられたB子さんは慢性的な欲求不満状態となっています。

母の強すぎる愛情に反発し、やがて母のやることなすことに拒否反応し、自分に対しても自己否定してしまいました。

その結果、B子さんは、成績は優秀ですが、対人関係がうまく築けません。

今でも部下に対して常に遠慮がちで、叱ることができません。

上司からは、仕事を任せて部下を育てるように言われているのですが、それもできません。

結局、自分で仕事を背負ってしまい、その分残業が多くなります。あげくは家に仕事を持ち帰ることになります。

しかし、家に帰ると母との諍いにあけくれ、仕事どころではありません。冒頭のような何げない会話でもけんかとなり、そのたびに自己嫌悪です。

涙を浮かべて部屋にひきこもる母の後ろ姿をみると、B子さんはいたたまれなくなりますが、どうしても素直に母を受け入れられないのです。

毎日このようなことの繰り返しでB子さんの悩みは限界に近づいています。

 

母の愛情飢餓感を理解すること

母は自分の子供時代に受けられなかった愛情を娘に注ぎたかっただけなのかもしれません。

そしてB子さんにしがみつき、離れることが不安なのではないでしょうか。

そのため娘に子供じみた態度をとってしまいます。それにB子さんは過剰反応してしまうのかもしれません。

諍いが多いのは母の愛情飢餓感に由来していると理解することが、B子さんの悩み解決の第一歩だと思います。