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社会にとけこめない人たち(その5) ~「現代型うつ病」はなぜ増えたか~

2012/06/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

「現代型うつ病」と言われる若い世代が増えています。

従来の「うつ病」は真面目で責任感の強い人がかかりやすいといわれてきました。ミスをして他人に迷惑をかけると自分を過度に責め、自殺もあります。

一方「現代型うつ病」は自己中心的で、不都合なことがあると周囲に責任を転嫁します。自分にとって受け入れられない事態になると「うつ病」の症状になりますが、休日は元気です。

4・5月号では「現代型うつ病」の事例を紹介しました。今月はそのような若者がなぜ増えてきたのかを考えます。

 

希望の持てない社会

バブルが崩壊し若者をとりまく環境は激変しました。もはや終身雇用制は過去のものとなりつつあります。

きびしい就職戦線を突破して運よく就職できたとしても、未来が明るいわけではありません。内定取消や過大な目標やノルマによる厳しい選別・評価が待っており、リストラや倒産もあります。所詮会社都合で働かされ使い捨てられると考える若者が多いようです。

職場は年々余裕がなくなり、仕事もかなりハードになっています。上司の注意も、自分を成長させるためではなく、逆に自分を潰すためのいやがらせにみえてしまいます。働いても働いても「生きがい」を見出すことは難しく、結局、社会や会社が悪いと他罪的な考えを持つようになった若者も多いようです。

「若者は何故3年で辞めるのか」(光文社新書)の著者、城 繁幸氏は、働いても報われない若者たちに、「自分の人生のレールはどこに続いているのか?そして何のために働くのか?を考えてみよう」と提唱しています。

 

良い子を生み出してきた教育

20年ほど前、中・高校で生徒たちが窓ガラスを割ったり喫煙、授業ボイコットなどの問題行動が社会問題となりました。

小学校では学級崩壊という現象が表れました。クラスのリーダーが仲間に命令し、授業中にさわぎをおこさせるのです。授業中に教室でカードゲームをしたり、教師の話しを聞かず教室の中を自由に歩き回り授業になりません。

親に訴えても、親は取り合わず、逆に教師の指導力がないからだといわれます。

ゆとり教育の時代、学校では、例えば運動会はみんなで一等賞、学芸会ではみんなが主役という状況もありました。競い合うことを良しとしない風潮が過剰になっていたのです。

学校では、学力をつけるよりも、協調性が重視されました。子どもたちは自己主張すると目立つので場の空気を読み、人の顔色をうかがいながら学校生活を送ってきました。

そのような良い子は、子どもらしいチャレンジ精神を失い指示待ち人間になっていきます。そして学校で習った正論に過剰適応した良い子は柔軟性がないまま社会に出ることとなります。

 

企業は根気強く育て直しを

社会は年齢も考え方も異なる、異質な人たちの集まりです。そこでは正論が常に正しいとは限らないのです。

正論には誰も真正面から反対できません。ですから良い子は正論に非常にこだわり、0か100の考え方をします。正論に反したことが許せなくなります。

しかし、正論を言いすぎると、大部分の人は「そうはいっても……」と納得しません。

例えば「ウソをついてはいけない」と教えられても上手にウソをつかなければならない状況が社会にはあるのです。ウソのつき方がスキルだったりします。

親はこのことを知っています。子どもの成長に応じて柔軟に教えていくことが必要だと思います。

Aさんは「人に優しくしなければいけない。そうでないと皆に嫌われてしまう」という考え方を正論として守って生きてきました。そして、ある企業に就職し、無我夢中で仕事をしていました。

しかし、一生懸命仕事をしていたのに、(自分にとっては)ささいなことで上司にきびしく叱責されてしまいます。

そのとき「あの上司は自分が一生懸命やっているのに全く認めてくれない。人に優しくできない上司は卑劣で人間性がない」と受け止めます。そして、

「あんな上司の下にいるのだから気分が落ち込むのは当然」と考え、心療内科を受診し、うつ病の診断書を会社に提出しました。

自分はうつ病であることを公然と言い、休職中に海外旅行をしたり友人と居酒屋で騒ぐことになんら抵抗感もありません。上司の悪口を自分のブログに書き込み、休職期間の延長を求める診断書を再提出しました。

「現代型うつ病」は、友人と騒いだり旅行で気分がよくなります。一日のなかでも気分の上下があり、従来のうつ病とは大きな違いです。

企業は、現代型うつ病社員への対応に苦慮しています。主治医の診断書を信じるしかなく、ある意味社員のいいなりになるような対応しかできません。

しかし、そのような若者も社会に貢献できる仕事を望み一生懸命仕事をします。配置転換や就業規則を基に、根気強くコミュニケーションをとりながら家族を交えて育てなおすことが必要でしょう。