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社会にとけこめない人たち(その2) ~部下におごり続ける課長~

2012/03/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

最近、対人関係がうまくいかず社会に溶け込めない方々に関する相談が目立ちます。

前号に掲載した「会話にならない部下」「年賀状がくると落ち込む主婦」「課長になるのがこわい中堅社員」の事例も、背景に不安があります。

その不安から自分を防衛するために様々な問題行動を起こし、対人関係がうまくいかなくなっているのです。

今回は部下とうまく人間関係が築けないA課長の事例を紹介します。

 

部下との飲食にこづかいを10万円超も

ご主人のあまりの金銭感覚の無さに悩んだ奥様が相談にみえました。

夫のAさん(45歳)は大手企業の課長です。

話によるとAさんは帰宅が毎晩午前様。翌朝はアルコールの臭いがぬけないまま出勤する毎日だそうです。

奥様はこんなことで大丈夫だろうかと常々心配していました。

ある日、Aさんのクレジットの明細書をみると、飲み屋の支払いだけで10万円を超えていました。

あまりの飲食に異常さを感じた奥様は、Aさんが寝入った後、かばんの中の手帳をのぞいてみました。

手帳には連日のように数名の部下の名前と飲食の額が記入されていました。部下を自腹でおごっていたのです。

Aさんは目立ちたがりで仕事は率先していくタイプ。同期の中では出世頭です。仕事人間ですが、実は家族想いで、いつかは一戸建てに住み、妻子を養い豊かな家庭を築きたい、子どもには充分な教育を与えたい、そのために出世しなければ、と考えているのです。部下と深夜まで酒を飲むのも家族のためなのです。

飲み食いが多すぎると訴えた時には「部下は俺を慕っているし俺の出世を喜んでくれている。そんな可愛い部下におごって何が悪い!無駄な金使いはしていない」と怒られました。

 

うまくいっていない部下との関係

常に部下と酒を飲み談笑するAさんですが部下と必ずしもうまくいっているわけではありません。

自分に厳しい分、部下にも厳しいため部下に休職者が何人も出ています。

これに対してAさんは

「努力が足りないだけだ。やる気のないものは去れ!」と自分を省りみることはありません。そして、仕事の成果があがると「俺の采配がいいからだ」とうれしそうです。

Aさんは常に、いい上司でありたいと思い、ひたすら部下におごりますが、部下がそれで満足しているかはわかりません。満足しているはず、と考え自己満足しているだけかもしれません。

 

これだけ部下におごっていても、部下を信じて仕事を任せることはできません。

部下がミスをした時は怒りを抑えることができず、ついつい大きな声で怒鳴ってしまいます。他部署との打合せで席をはずした部下が、「席をはずします」といわなかっただけでAさんの形相は変わります。そのたびに職場の空気は凍りつきます。

あとで、なんであんなに怒ったのだろう、と反省しますが解決には到りません。

 

好かれたい気持ちと「分離不安」

Aさんの行動は以下のようになります。

・家族のために出世をめざす

・仕事熱心で常に残業する

・好かれたいために残業後は部下を誘いおごり続ける

・部下が失敗すると厳しく叱る。感情の起伏が激しく、ささいなことで不機嫌になる

Aさんは、人に評価されたい、嫌われたくないという気持ちが人一倍強いのですが、そのことを意識していません。しかし、その不安が常識を超えたおごりや、感情の起伏の激しさの背景になっています。

話を伺うとAさんの不安は、幼少期の母子関係の不安定さに原因があるようです。精神分析的にいうと「分離不安」が強いようです。これは、幼い子供が、親が自分を置いてどこかへ行ってしまうのではないかという恐れを抱くような不安です。

このような不安を増長させ、愛情への飢餓感を持ったまま大人になったことがうかがえます。そのような気持ちを意識せず、自分には不安はない、愛情に満たされていると思い込んで行動してきたようです。

おごり続けるという不安神経症的な行動から解放されるためには、自分に「分離不安」があること、そして「愛されたかった」ことを認めることです。

本当の自分を知ることは辛い作業ですが、ありのままの自分を受け入れてこそ、自立への道が開かれます。(続く)