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男性の涙

2011/11/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

海江田さんの涙

7月29日の衆院経済産業委員会で海江田経済産業相(当時)は野党から「出処進退を口にして辞めなければ価値を落とす」と早期辞任を求められました。

「自分の価値はどうでもいいですよ」と答弁した後の海江田さんの涙に対する産経新聞(9月23日付)のアンケート集計結果が掲載されました。

 

アンケート回答者6019人(男性5026人、女性993人)

集計結果

1 海江田元経済産相の涙に同情するか

YES17%、NO83%

2 男性は泣くべきではない

YES48%、NO52%

3 周囲に涙を見せる男性がいるか

YES37%、NO63%

 

国会の答弁の最中の涙に精神科医香山リカさんとマーケティングライターの牛窪恵さんのコメントが産経新聞に掲載されており以下に要約しました。

<古い価値観で責めるな>

草食男子の実態に詳しいフリーライターの牛窪恵さんは40代から50代の男性は男は泣いてはいけない。じっと耐えるべきだという考え方に縛られている。

泣くのはよほどのことがあったのではないか。上司である当時の首相に振り回され我慢していたんだろう。追い詰められていたと思う。かわいそうだ。

社会状況が変わり「男のくせに」という古い価値観で男を責められない。

今、状況的に若い世代を中心に泣く男が増えている。つらいことがあっても抵抗なく泣く。泣くことはストレス解消なのだから無理せず泣いていいと男の涙を肯定している。

<感情に訴えるのは危険>

精神科医の香山リカさんは海江田さんの立場にいる人の涙には批判的です。

しかし前置きがあり泣いたり感動したりすることは悪いことじゃないが、今の若者文化が感情を抑制せずストレートに表現することを肯定されすぎる風潮に違和感がある。

泣けるもののブームがあり情緒に訴えるものが価値が高いという雰囲気である。理屈をこえ、あんなに泣いているんだからという理由で言い分が通ったり大声で怒鳴った人の意見が通ってしまう社会は危険だ。

じっくり論理的に考え感情を抑えながら対話を続けられる人が割をくってしまう、と男の涙を全面的には肯定しない。

二人の女性のコメントは、男の涙に対して容認する立場と情緒的にかたよるよりはじっくり考えることが必要だという立場です。

私たちがカウンセリングをする場面でも男性が涙することがあります。

 

 

事例1.内定通知書に涙

26歳男子:就職浪人

リーマンショック以来の不景気で卒業しても就職できませんでした。その後1年間引きこもり。母が息子を引っ張るように来所。有名私立大学を卒業するも数十社の就職面接で内定がもらえず心労のためか自信喪失して引きこもる。印象は真面目で誠実。しかしどこか芯の強そうな雰囲気がある。週1回の面談で目標は1年後の就職。

こうして1年がすぎました。そして、希望の会社から内定をもらいその報告に来所されました。大粒の涙が内定通知書に落ちました。

 

事例2.金魚が死んだ

中学1年生(男子)

中学受験のため小学3年生から塾通い。好きなサッカーも友人の誘いも断わり、毎日、受験勉強にあけくれる日々。やっと念願の中学に合格しました。

しかし、入学式の当日に発熱。しかたなく休んだのですが、その日から登校できず夏休みになってしまいます。

そして母とカウンセリングに来所。利発そうな男の子で受け答えもしっかりしていました。何度目かのカウンセリングで母が席をはずしたとき、理由を話してくれました。

それは入学式の前日のこと。飼っていた金魚が亡くなったことだったのです。

「僕の金魚が死んでいる!」と彼は両親に訴えたのですが、親は入学の準備で忙しく聞いてくれません。

父親は無神経に金魚の死骸をゴミ箱に捨ててしまったのです。

彼の心の中にポッカリと穴が開いてしまいました。

「大事に育てていたのに……」彼はワアーと大声で泣きました。

 

事例3.転勤の内示

35歳:男子社員(営業職)

新任の部長が上司として赴任。3カ月が経ったころ不眠がはじまり集中力がなくなります。取引先との打合せを忘れ、部長から恫喝され、給料泥棒とまで言われてしまいます。

体重は月に2キロのペースで減。主治医から休職の診断書を提出し、自宅療養。病名は職場不適応。主治医のコメントは「適切な職場配属が望ましい」。

3カ月後に復職。しかし、部長から海外に赴任してほしいとの話がでます。

親の介護のため家を新築し妻は妊娠中という環境の中での転勤要請です。彼の目は涙がにじんでいました。

 

事例4.男手一つで娘さんを養育

58歳:自営業男性

娘さんが2歳のときに妻が交通事故死。以来、男手一つで育ててきました。保育園の送迎、お弁当作り、PTAの参加。中学生の頃から家事は娘さんが引き受け、晩酌のつまみを作ってくれることもあったそうです。

娘さんが大学2年の頃リーマンショックのあおりを受け会社が倒産。負債をかかえた父を見かね、娘さんは大学を中退し働きはじめます。

父はローン返済のために昼夜働きづめ。そんなある日、娘さんは父に結婚の話をします。しかし、父は聞く耳をもちません。ますますかたくなになり、娘さんは外出もままなりません。

父に反対され、ついに抑うつ状態になり来所。

「喜んで結婚に賛成してもらえると思っていました。父の反対理由が分からず相手を紹介すらできません」と訴えます。

二人は結婚後、父と同居したいという気持ちがあり、そのことを父に伝えることをすすめました。

しばらくして娘さんが久しぶりに来所し、報告してくれました。

「結婚式の前の晩、母の仏壇の前で背中が揺れている父を見ました。ここまで育ててくれた父に本当に感謝することができました」。

◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇◇

男性の涙も女性と同じように理性を越えた感情の結果ですが、女性と比べると感情を抑えながら流す涙が多いように思います。

男の涙を見て「とても切なく感じてしまう」という女性は「男はじっと耐える」という古い価値観を持っているためだと思います。

「人前では涙を見せない」と言っていた男性が不覚にも涙をにじませる姿を見た女性は「男のくせに」とか「頼りない」というより母性的心理にスイッチが入り「よし、よし。私がなんとかしてあげる」とか「寄り添ってあげたい」という感情になるようです。

また、男の涙を見て「かわいそう。心配だ」と感じる女性は「男だって我慢するよりストレートに感情を表現していい」という価値観を持っているようです。

彼女たちは「泣ける男性は女性の気持ちをより理解してくれるはず」という期待もあり対等感を大事にしています。泣ける草食男子の心理は、より女性心理に近づいているのかもしれません。

男女雇用均等法の施行が「男の涙」の価値観を変えたのでしょうか。

皆さんはこの事例にある男性の涙をどのように感じたでしょうか。