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介護とストレス

2011/08/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

ストレスは人間が生きている以上常につきまといます。

天災、事故、近親者の死、また日常生活でも職場や家庭でさまざまなストレスがあります。

今回は家庭での介護とストレスについて考えてみます。

 

<事例1>寝たきりの母(78)の介護

会社員Aさんは15年前、2世代住宅を建て、母と同居することになりました。

母は教師を長年勤めており、自立心が強く気丈です。退職後はボランティア、おけいこごとで出かけることが多く老後を楽しく生活していました。

ところが、4年前、道で転んだことがきっかけで寝たきりになり、最近では軽い認知症も患っています。

Aさんは仕事があるため、妻が母の面倒をみています。

たまにAさんの姉がかけつけてくれますが、姉も勤めがあるため、妻に介護の負担が重くのしかかっています。

妻は、週1回2~3時間の介護にかけつけてくる姉のことが面白くありません。最近はAさんに愚痴をこぼすことが多くなりました。

しかし、Aさんは

「オレは忙しくて疲れているんだ。そういうことはお姉さんとうまくやってくれ」と言うだけです。

一応、姉に介護の時間をもっと増やしてほしいと頼みましたが、姉は

「これ以上はムリ。そんなに大変なら施設に入ってもらったらいいんじゃない」と言います。

やむなく施設に申し込んでみましたが、すでに100人以上の待機があり、いつ入所できるのか全く見当がつきません。

現在はヘルパーさんの援助を受けながら対応しているのですが、いつまでも続く介護に夫婦とも疲労がたまっています。

それとともに夫婦関係はぎくしゃくし、最近は会話も全くありません。

Aさんは会社が唯一の息抜きの場所になってしまいました。

そんなある日、久しぶりに同僚と飲んで帰った日の翌日、妻はメモを残し実家に帰ってしまいました。

なんとか話し合い、妻はもどってきましたが、夫婦関係の修復にはまだまだ時間がかかりそうです。

「家に帰ると妻の愚痴がはじまる。このままでは自分はうつになりそうだ」

Aさんの憂鬱は続きます。

 

<事例2>父を介護する不安障害を持つ長女

B子さん(53歳:既婚)は一人暮らしの父(88歳)を介護しています。

父は昨年、母を心筋梗塞で亡くしました。

「お母さんが廊下で寝ていて起きないんだ」という父からの電話で母の死を知ったといいます。

葬儀場で父は

「早く家に帰りたい。家でお母さんが待っている」と言い張りました。

その後の父はヘルパーさんの援助と1日1回のB子さんの訪問で生活を支えられています。

父は足腰がじょうぶで、自転車で買物にでたり、郵便局で年金をおろし、帰りにスーパーでお米も買ってきます。

「お父さんはあんなにお元気で、私たちの励みになるわ」とご近所の人たちからしばしば声をかけられるほどです。

しかし、そんなはげましとはうらはらに、B子さんは不安神経症から情緒が不安定になり父の家を訪問することができなくなりました。B子さんにとって母の死が大きな心の痛手だったのです。

父は、ゴミの分別ができません。仏壇のロウソクの火やガスコンロをしばしば消し忘れます。洗濯の仕方、お金の管理、確定申告の作成などありとあらゆる父の生活がB子さんにとって悩みの種です。

父の家を訪問するたびに、大声を出して父を叱責してしまい、そのたびに落ち込んでしまいます。

「母を亡くし高齢なんだから」と自分に言い聞かせますが、父のだらしない現状を目の当たりにすると苛立ち感情的になってしまいます。

 

ある日B子さんは老人ホームに父を入所させる決心をしました。

きっかけは冷蔵庫の中で何日も経って腐った豆腐を食べ、下痢をしたときです。下痢をしているにもかかわらず父は常用している下剤を飲み続けたのです。

このほか下着の洗濯ができない、庭に放尿するようになった、など父の行動にがまんができなくなったのです。

しかしB子さんには迷いと不安があります。

「オレはこの家で死ぬんだ。施設には絶対に行かない」という父の悲しそうな姿をみていると、「あんなに元気なのに施設に入れてしまうのはお父さんがかわいそう」「親の面倒を最後まで見るのが子どもの役割ではないか」とも思ってしまうのです。

施設に入所するには面接があります。認知・身体・社会性など集団生活を営むためのレベルチェックです。

面接日が近づいてB子さんの不安は強くなります。父への説得はうまくいっていません。

 

<事例3>おっぱいをまさぐる父への嫌悪感が消えたとき

父(76歳)は元来明るい性格で笑いがたえませんでした。しかしここ2、3年、家族が首をかしげる事件を度々起こします。

玄関の鍵のかけ忘れ、お風呂の沸かしすぎ、ATMカードの紛失、自転車の置き忘れ、他人の自転車を借用、母の名前を度忘れ、幼児化……。父の人格が壊れていくように感じています。

C子さんは父・母・姉と4人で暮らしていましたが、父の老化と痴呆を受け入れることができませんでした。

 

母の介護負担が日に日に重くなっていったからです。母に甘える父はまるで幼児のようでした。

会社から帰宅しても父と目を合わせられませんでした。父に優しく言葉をかける母に対しては怒りさえ感じました。

その怒りが頂点に達したのは、父が幼児化し、母のおっぱいをまさぐったときです。

母に対して侮辱的な行為をしているにもかかわらず、母はニコニコしながら「もうちょっと待っててね」と父の手をそっと離します。

汚らわしい、不道徳、恥ずかしい、みぐるしい、こんな感情を両親にぶつけていました。

それからしばらくして父は施設に入所しました。C子さんは毎週日曜日、母と一緒に見舞いに訪問します。

 

そんなある日、父に対する嫌悪感がすうっと消えた出来事がありました。

友人の出産祝いに訪問したときに赤ちゃんの手が丸まるとした友人のおっぱいを抱え込み、目を閉じてミルクを飲んでいる様子をみたときです。

C子さんはネットで「おっぱい」を購入。ゴム製でさわり心地はまるでお母さんのおっぱいのようです。乳頭もついていて2個で1組。

久しぶりに父の面会です。C子さんは「お母さんのおっぱいよ」と差し出すと父は童顔になりおっぱいにほおずりをし、手でモミモミしておっぱいを吸います。

C子さんはそんな父に愛おしさを感じ、育てられたことに感謝しました。

 

◇◇◇  ◇◇◇ ◇◇◇

介護には様々なドラマがあります。介護される人と介護する人の人格について考えさせられます。特に認知症を患った家族のストレスは深刻です。

一人で考えないこと、孤立しないことが大切です。世間の目や倫理観に縛られず行政の力を借りたり専門家に相談する等オープンマインドになることが必要と思います。