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脅しや褒美でなく望ましい行動へ導くために

2011/03/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

人は強制されずに、ある行為を自ら選択すると、成功・失敗の結果に関わらずその行為の責任は自分にあると考える-  フリードマン(米)のこの概念は様々な場面で活用されています。

 

朝鮮戦争で米兵が思想転向した事例

朝鮮戦争時、捕虜となった米兵を共産主義に転向させるために、中国軍は次の手段をとったといいます。その方法は、

①家族に手紙を出すことを望んでいる米兵に共産主義の良さを付け加えた手紙だけを許可する。

②プレゼント(数本のタバコ、少ない果物)を用意し、共産主義を支持する内容を書かせるエッセイコンテストを開催。ひとつでも共産主義を支持する内容があれば賞を与える。

③米兵が書いたそのような文章を収容所の全員に公表する。

 

その結果、多数の米兵が自主的に転向したといわれています。

人は脅迫や豪華なプレゼントで操作されなくても、自ら選択した行動に対して責任感をもつことがわかります。

 この場合、「他者への公表」がキーワードです。

心理学的にいうと、思考と行動が一貫している人は的確な判断や推察力があり信頼できると考えられ、逆に、一貫していないと責任能力がない信用できない人と判断されがちです。

ですから他人に対して自分の立場を明確にすると、一貫した人間であろうとするのです。

最近では俳優の舘ひろしさんがテレビで禁煙を誓った例があります。タバコをやめたいと思っていてもやめられない人は、尊敬する人に「私はタバコをやめます」と書いたカードを渡すことです。タバコを吸いたくなっても、約束を破ったら尊敬する人から蔑まれると考え禁煙に成功します。

 

企業での目標面接

 企業では職場を活性化させ生産性を上げるために、強制よりも職員の自主性を重んじる方法がよく採用されます。自分の意志による目標の宣言と、その目標に向けた一貫した行動を評価しています。

事前に自分の目標、具体的行動プランを記入し、上司の前で公表するというやりかたです。

次回の面談では前回記入した内容について更なる改善点や目標を自ら書いていきます。目標に対する一貫した行動に対して上司は評価します。

会議で大勢の前でプレゼンテーションさせる方法も採られています。事前に資料を配布し、賛否を問うような案件には全員に挙手をさせ自分の意志を表明させます。

 

子供の教育の場面で

70年代に「オラは死んじまっただー」というヒット曲を出したフォーク・クルセイダーズというグループがありました。そのメンバーの一員であった北山修さんのエピソードです。

医学部在学中にヒット曲を次々と世にだし、その後解散、大学を卒業したあと九州大学で教授を務め昨年退官しました。

彼は日本の教育の原点は母子関係にあるといいます。江戸時代の浮世絵にある母子像から子供が成長していく構図を見出しています。母に抱かれた幼子は守られながら外の世界に少しずつ興味を持ちはじめ自立していく準備をします。そこに父の姿は描かれていません。

人を自立させるには、母性的関わりが要です。強制せず、見守りながら自主的に行動させることです。時にはワガママを許しているように見えることもあります。しかも子供の失敗の責任はすべて母親が包みこみます。

こうして人間としての基礎ができてから、父親が登場し、社会で生き抜くための知恵や哲学を学んでいくのです。

 

ご褒美は逆効果

親から「百点をとったら自転車を買ってあげる」と言われて百点をとり自転車をもらう子がいます。

一見、褒美の成果のようにみえますが、本人にとって逆効果のことが多いのです。しばしばそういう経験をした子は、失敗した場合、その原因を他人のせいにしがちです。対人関係がうまくいかず、社会での適応能力が低くなる傾向がみられます。

脅しや褒美で子供を操作すると、一時的によい子に育っても、本人の基礎的な力は薄氷のようにもろいのです。

たとえば親が幼い子に「嘘をつかない子」になってほしいと望みます。強制的な教えは「嘘をついてはいけません。嘘をついたら舌を抜くよ」「みんなに嫌われるよ」と脅かすと、子供は親がいる前では嘘をつきません。

しかし「悪いことだから嘘をつかない」という意志は生まれてこないのです。

そして親のいない時に嘘をついてしまいます。

嘘をつくと深い罪悪感を持ってしまい、心にしこりが残り、自分は悪い子だというレッテルを自身に貼ることになります。

親は正直な子でいてほしいと願うのであれば子供によって違いはありますが「嘘をつかないで欲しい。嘘をつきたくなったらいつでもいってきなさい。怒らないから。どうしたらいいか一緒に考えようね」というニュアンスを伝えるのです。

子供は「嘘をついてはいけないけれどひょっとして嘘をつきたくなることがあるんだ。その時は相談すればいい」と気が楽になり、嘘をつかない子でいられるのです。

子供に望ましい行動をとらせるには、強制的な「しつけ」より親の経験から得た柔軟な考えを伝えていくことでしょう。そうすれば、自分で考え、自分で行動できる子供に育っていくことでしょう。