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執着せず真面目すぎず、あるがままに

2010/12/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井 たみえ

 

「毎日、漠然とした不安を感じてしまいものごとに集中できず何事もうまくいかない」という人がいます。

不安な考えが先にでてしまい、何も行動せず「やっぱり人生はうまくいかない」と結論づけてしまいます。

例えば、「結婚したいけど私はもてないから無理。結婚できたとしても相手は私の気持ちを分かってくれないだろう。子どもができたとしても、その子が今の世の中で幸せに育つとは限らない」と考えてしまうのです。

 人はなぜ不安になるのでしょうか?事例をもとに原因と解消法を考えましょう。

 

B子さんの出現で不安になった女性管理職

事例:A子さん38歳、独身、大手企業の管理職

A子さんは社内でも評判の優秀な管理職です。部下の男性たちはみな彼女に一目置いています。

仕事への意欲が高く、家路につくのは深夜に及ぶこともしばしばです。

遅くまで残業ができるよう、最近、都内のマンションを購入しました。ローンもありますが、定年まで働く覚悟を決めてのことといいます。

今までは若い女子社員が結婚で退職するときは「お幸せにね!」とお祝いのプレゼントをして送り出してきました。

結婚に対しての憧れは特になく、ヒトゴトのように感じていたそうです。B子さんが現れるまでは……。

A子さんが不安感に悩まされるようになったのは、B子さんが管理職試験に合格し、彼女の部下として赴任してからのことです。

B子さん(35歳)は温厚で人間関係もそつなくこなし、仕事も積極的です。既婚で、子どもが1人います。

ある日、職場で急なトラブルが発生しました。

そこでA子さんは、やむをえずB子さんに残業の依頼をしました。

ところがB子さんは返事を保留します。

「保育園の迎えがあるので夫と調整してからでよいですか」とこたえたのです。

A子さんは内心、「管理職でありながら家庭の事情を言い訳に持ち出すなんて……」と思いました。

このときは結局、夫が保育園の迎えに行くことになり、B子さんは残業してくれることになりました。表面的にはトラブルは解消されました。

しかし、わき目もふらずガムシャラに仕事をしてきたA子さんにとってB子さんの対応は衝撃的でした。

「B子さんは自分の人生を前向きにとらえ、無理をせず仕事と家庭を両立させている。それにくらべてわたしはこれでよいのだろうか……」

A子さんは迷いはじめたのです。

 

 

不安を起こす原因① 執着心

今の状況を守ろうとする気持ちが強すぎると、かえって不安になります。いつかこの状況が壊れるのではないかと怯えてしまうからです。

A子さんは現在の環境に満足し充実していたのですが、その状況への執着心が強すぎたので、B子さんの出現によって

心が乱されてしまいました。

結婚をしてそつなく仕事をこなす女性が目の前にいると、

「私も結婚できたのではないか」

と考え、

「結婚するとしたら会社を辞めたり、マンションを売ったり、子どもも産まなくてはいけないかもしれない……」

「しかし今の生活を支えているのは勤めているからこそだし……」

と迷いは続きます。

 

「できないものはできない」という割り切り

A子さんの不安を解消するためには、人の幸せと自分の現状を比べないことにつきます。

そして、

「できないものはできない」

と割り切り、現時点での自分を肯定することです。

まず、A子さんは、確実に歩んできた今の地位を認めることです。

そのうえで、現実的に結婚ができるかどうかを検討していきます。その結果、結婚に向けて行動するのか、現時点では難しいと見極め先送りするのか、答えが出てくると思います。

 

不安を起こす原因② 真面目すぎる

ものごとを真面目にとらえすぎると、

「~べきである」「~しなければならない」という考えが優先されてしまい、柔軟に考えることができなくなります。

そうすると本来の自分との間に葛藤が生じて、不安が強くなってしまいます。

真面目な人は自分の本当の姿を他人にはみせられず、常に愛されキャラを演じてしまいます。

自分の弱点を隠している分、漠然とした不安が強くなり、その結果、生きるエネルギーさえもなくしてしまうかもしれません。

かつてA子さんは「女性は結婚して子どもを産み、家庭を築くことが幸せである」と漠然と考えていました。

しかし、結婚に向けての具体的な行動をとらず、女性管理職への道を選択しました。

「結婚には適齢期がある」と周囲から言われてもA子さんは結婚だけが幸せな道ではないと決心したのです。

自ら選んだ道に対して不安が生じたのは「女性は~するべき」という観念が心の片隅にあったからです。

ただし、B子さんのようになりたくても、今のA子さんにとって、それは現実的に難しいかもしれません。

「為せば成る」という格言は現実の等身大の自分を知った上でのみ通用するのではないでしょうか。 

不安になる原因から逃げずに自分と向き合っていくことが大切だと思います。

 

夏目漱石の「こころ」にみる不安と嫉妬

夏目漱石の「こころ」は1人の女性をめぐる男の嫉妬、そねみの心情がよくあらわれています。

主人公の先生は軍人遺族(未亡人)の家に下宿しています。未亡人は先生と娘をなんとか結婚させようと希望しており、先生もまんざらでもないのですが、男として結婚相手は自分の力で勝ち取りたいという思いもあり、ためらっていました。

そのような状況で先生は友人のKを下宿人として紹介します。

Kは娘に一目ぼれをし、熱い恋心を先生に告白します。

ところが先生は、愛する女性を略奪されたような気持ちになり、Kを嫉妬し憎みます。そして、Kに「お前のような精神的向上心のない男はバカだ」と二度も吐き捨てるように言い攻撃します。

「僕は馬鹿だ」。Kは落胆し、娘との恋をあきらめます。

その後、先生は娘との婚約をとりつけます。それを聞いたKは先生の裏切りに絶望し自殺してしまいます。

時代背景もありますが明治時代以降は西洋思想の影響もあり「向上心を持つ」ことは、できる男の象徴でした。

確かに「精神的向上心を持つこと」は人間を成長させる原動力になります。

主人公の先生は「男には向上心が必要だ」という建前で、友人であるKを叩きのめし、娘から遠ざけました。

また、先生は他人の幸せに嫉妬しました。他人が幸せになると自分が不安になるからです。

 

不安なく楽しく生きている人たち

この世の中には、自分の地位、収入、観念にとらわれず「人生はなんとかなるさ」と楽しく生きている人たちがいます。

「人生は不安なことばかり」と考えている人と実は同じ状況にいるのに地位、収入、観念にしばられていないので不安に振り回されることはありません。

執着せず真面目すぎず、あるがままに生きていくと不安が遠のいていきます。