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(続)「火をけしたかな?」と出先で不安になったことはありませんか

2010/03/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

前月号(2月号)では、火を消したか不安になり、友人を残して旅先から急に帰ってしまったM子さんと、作業手順や清潔さに人一倍こだわりの強いB子さんの事例を紹介しました。B子さんは夫婦でスーパーに買物に出かけ、レジに向かう途中で買い忘れに気付きました。そこで、夫に買物カゴをみててもらうよう頼んだのですが、夫は持ち場を離れてしまいます。誰かが触ったかもしれないとB子さんは怒り、カゴの中の商品をすべて元に戻すよう夫にいいました。

 

不安神経症の人たち

人が行動を起こすときは、何かを考え(無意識のときもあります)てから行動しています。

例えば「会社に行って今日はあの仕事をして、部長に何時に報告して……」と考えながら(意識)鍵を持ち、ドアを閉めてガチャという音を確かめ、さらに一度ドアを引いて閉まっていることを確かめて、出勤します。

会社に着いて一息ついた頃、「あれ!!鍵は?」と思ったとしても、たいていの人は鍵をかけたときの記憶を思い出して不安を解消します。思い出せなくても日ごろの習慣から「大丈夫。いつもちゃんと鍵をかけているから」と考え、不安を解消します。

 ところが不安神経症の人は「鍵をかけた」ときの記憶(考えて行動したこと)を思い出せないのです。「記憶する」メカニズムがうまく機能していません。

その原因については様々な研究がされていますが、心理的側面から考えると「自分の存在があやふやで自信が持てない」人が記憶を呼び起こすことが困難になるようです。

 

M子さんは自分に自信がなく、何かを決めるときには必ず人に聞きます。しかも一人ではなく何人かの人に聞かなければ安心しません。

出かけるときは電気、ガス、鍵の確認で10分から20分もかかります。

しかも道を歩いているときに「自分が何か汚い物を落としていないか」と不安になり、後を振り返りながら歩いています。そのために目的地に到着するまでに人の倍の時間がかかります。

友達と待ち合わせをしたときなどは、その場所に辿り着くのに数時間かかるため、やっと会えたときには疲れはてています。

M子さんは10代の頃からパニック発作の症状があり、特に寝不足、体調不良のときには今でも発作が起きます。

 

B子さん(26歳)は結婚前、手洗いに1時間、シャワーに2時間、外出するときは洋服の確認から始まりドアを閉めるまで3~4時間かかりました。

洋服を着ているか?人の靴を履いていないか?という通常では考えられない不安を解消するために時間がかかるのです。

彼氏ができてからのB子さんは、そのような症状がほとんどなくなり、生活に潤いが出てきました。

しかし結婚式の準備が始まる頃から確認のための時間が多くなりストレスがピークに達しました。

「婚約解消」という4文字が頭に浮かばぬ日はなかった、とはご両親の当時の想いです。

 

「自分は汚れている」という思い

M子さん、B子さんの共通点は強迫神経症です。

そして彼女たちの自己像は「自分は汚れていてみんなに迷惑をかける存在」なのです。

ですから他人に対して決して勝手でわがままな存在ではありません。

逆に謙虚で奥ゆかしく目立つことを嫌います。

M子さんが道を歩いていて、振り返るときも「自分が汚い物を落として、それを誰かが拾うとばい菌がついて迷惑をかけてしまう」と考えてしまうからです。

前号でB子さんがスーパーで手元から離してしまった買物カゴの商品を棚に戻させたのは以下のように考えたからです。

「買物カゴにある商品は他人が触ったかもしれない→他人が触ったとき、私のばい菌に感染してしまい、私が汚い人間だとその人にわかってしまう→私が棚に戻せば、その商品を他人が買うとき、感染して、私にクレームがくる→夫は信用できる人だから夫の手で商品を戻せば、私が汚い人間だと知られずにすむ」

他人の靴を間違えて履いたとしたら、

「自分の汚れがその人の靴にうつってしまい迷惑をかけてしまう。そして、自分が汚れているということがわかってしまう」

と考えてしまうのです。

「自分が汚い人間であることを知られると、他人はばい菌がうつると考えるし、人に迷惑をかける。知られてしまうと社会から孤立してしまい、この世から消えたくなる」

このような自己像の歪みは日常平穏に暮らしている人達からみると、本当に理解に苦しみます。

「そんなことないよ」という一般的な考え方に近づくために、彼女たちと私のカウンセリングは続いています。(続く)