エディプスコンプレックスと草食系男子 | BLOG | EAPとメンタルヘルスの事なら、みらい総合心理研究所へ

  • 11:00~18:00(最終受付 17:00)

  • 045-228-7171
  • 何でもお問い合わせ下さい

エディプスコンプレックスと草食系男子

2010/01/01
ロゴ

みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

 先月号(09年12月号)に掲載しましたが、Mさんは部下への指示ミスから職場で孤立し休職に至ってしまいました。

「小さい時から対人関係がうまくいかないのに部下の指導などできない」と日頃から悩んでいたところにこの事件です。

Mさんはエディプスコンプレックスによる「父を殺したい」という気持ちが潜在意識にあり、どうしても自分を否定的にみてしまいます。そんなことも今回の事件の背景にあるようです。

うつ病を発症したMさんのカウンセリングは続いています。

生きる意欲をなくし、「死にたい」と思うことが多く、自宅で一人引きこもる毎日です。悪夢は相変わらず続き、Mさんを悩ませます。

 

妻の追い討ちをかけるひと言

重篤なうつの場合、どうしても家族の協力が必要です。そこで妻(A子さん)とご夫婦でのカウンセリングを始めました。

A子さんは

「夫はうつになるような人だとは思ってもいませんでした。仕事の愚痴など言ったこともありません。仕事熱心でボランティア活動も積極的。家族のことでちょっとした言い争いはあっても、それなりに解決してきました。最近は息子のことで私に「甘やかしすぎだ」と言われ息子と夫との間に入っていたんです。夫がうつ病と聞き、気が動転しています。私にできることはありますか」

うつむいているMさんの横で必死に訴えてきました。そして、

「あのう、いつまで休めばいいんでしょう?会社はクビになるんでしょうか?子供たちに何と言えばいいのか……」

という妻の質問を聞いていたMさんは

「自分の居場所なんてどこにもない」

と、ぽつりと言い残しカウンセリングルームから出ていきました。

A子さんは何が起きたのか分からず「どうしたの、どうしたの」と夫の後を追いかけていきました。

後日、Mさんはそのときの気持ちを伝えてきました。

「妻は夫の気持ちを理解することより、生活費のことが心配なんでしょう。家族のためと思って働き続けてきたのが一気にくずれてしまった感じでした」

うつ病を患った夫が、妻からあのように言われたら流石に落ち込みます。

自信をなくして、どう生きていけばいいのかさまよっている夫には大きな一撃だったのでしょう。

 

エディプスコンプレックスを乗り越えたMさん

Mさんは精神分析的解釈でいうエディプスコンプレックスがありました。その特徴は父を殺してしまったために去勢される不安を無意識に持っています。

去勢不安は男性としての機能を奪い取られる不安を意味します。

その不安から逃げるために例えばボディビルなどで体を鍛えたり、女性に優しかったり、逆に亭主関白になったりします。

Mさんも実母には優しく妻には亭主関白を装っていました。

ある日、私はカウンセリングでMさんから母親としての役割を押し付けられていることに気づきました。それはMさんに去勢不安があったからです。

そこから私とMさんのカウンセリングは進展し、やがて父親とMさんとのエピソードが語られました。

父親はとても厳格な人で、彼を威圧していたこと、そのため父を憎み、母に助けを求めていたこと等です。

Mさんは自らの言葉で対話することにより、私という母性に訴えるとともに私の内なる男性性(父性)とも向き合っていきました。

そして、己の独自な男性性を築きあげることができました。

その頃から「殺人者として指名手配される」夢をみなくなり、家庭生活にも落ち着きが見えてきました。

 

草食男子とエディプスコンプレックス

昨今の草食系男子の裏側にはエディプスコンプレックスがあるのでは、というのは私の想定ですが、管理職不適応によりうつ病を発症したMさんには草食系男子といわれる特徴がありました。

草食系男子には、「女性のいいなりになって、戦うことを放棄した男性」のイメージがあります。

特徴としては、自分で決めることができず人に委ねる、女性から頼られることよりも仲間を意識する、または依存する、男性に対しては闘うことを避け父親的存在を求め頼りにする、などがあげられます。

Mさんはエディプスコンプレックスを乗り越え男らしい自分を取り戻しました。

ここでいう男らしさとは、自分の世界を取り戻した、ということです。他人の意向ではなく、自分の意志で決めることができる人、ということです。

そして、他人の意見や気持ちを聞き、自分の意見や気持ちを伝えるというコミュニケーションもとれるようになったのです。

自分を取り戻すためにはエディプスコンプレックスを乗り越えることが必要なように私には思われます。

しかしエディプスコンプレックスを脱出し、草食系から脱し、男らしくなった男性は現代の女性に果たして受け入れられるのかというと、これはまた、別の問題だと思っています。   (続く)