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父を憎み、母を憎む エディプス(エレクトロ)コンプレクスとは

2009/11/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

エディプス期(3歳から4歳)は幼児が異性の親に愛着し、同性の親を敵視する、いわば最初の人間関係に葛藤する時期です。この葛藤が克服されないと、後に神経症の要因となることが多いといわれています。

<事例>

Mさん:46歳男性、A子さん:妻42歳、

長 男:高校1年、長 女 :中学2年、

同居の祖母(A子さんの母):67歳

 

殺人者として追われる悪夢

Mさんは風邪をひいたときに変な夢を見ました。

その夢は、自分が殺人者として全国に指名手配され、常に追いかけられているというものです。これがきっかけで悪夢は続きます。特に不安な状況になったときに同じような夢を何度もみて、目覚めの悪い日が続きました。

Mさんはボランティアとして子供会(野球部)の世話役を引き受け、子どもたちの面倒をみています。そのため、休日は朝早くから出かけます。この活動は、とても充実しており、ストレス解消にもなると語ってくれました。

しかし、家庭では妻のA子さんに対して依存的で、そのくせ自分の思うようにならないと攻撃的な言動を繰り返します。関係がこじれると何日も口をきかず、家庭は気まずい雰囲気になります。

A子さんはつねにMさんに気をつかっているのですが、長男が話しをきいてくれることで救われています。

 

おかず事件と長男

あるとき、A子さんは長男が部活で疲れ果てて帰ってきたので、おかずを1品多く息子のために出しました。

それをみていたMさんと長女は「過保護すぎる」とA子さんを責めました。

A子さんは嫉妬されたと考え、かくれて息子に与えるようになりました。夫と娘に気兼ねをしながらでも、息子の喜ぶ顔を見るとほっとしたのです。

このような家庭ですから、長男はMさんに対して口もききません。「ただいま」「おかえり」の挨拶もないのです。

 

バスタオル事件と母への嫌悪感

長女はある日、風呂上りにバスタオルをまいただけの姿でMさんの前にあらわれたことがあります。

A子さんは「なんてだらしない。着替えて出てくるのが当たり前でしょ!いい歳して何をやってんの!!」と怒鳴りつけました。

Mさんはそんな長女に優しく「着替えておいで」と言い添えました。

長女は「家族なのに何が悪いの。お母さんは考えすぎだよ」と泣きながら着替えました。

 

一見ありふれた家庭で病理が深化する

A子さんは実の母との折り合いが悪く、強い怒りの感情を持っています。

母は専門職として長年働き、定年をむかえてから習い事、旅行などで家を空けることが度重なっていました。

夫を15年前に亡くし、女手ひとつで娘(A子さん)を育て上げ、娘の家族と同居ができ、幸せを感じています。

しかしA子さんの方はそうは思っていません。小さい頃からたびたび留守番をさせられ、母のいない時間にさみしい思いをしてきました。

そのため、自分は母から見捨てられたと感じていたのです。

父が気の毒で、母の自分勝手さに腹がたっていました。

一見すると、このような家族はどこにでもある風景です。しかし状況が変わらずに時間だけが経過していくと、家族の病理は深くなっていくのです。

Mさんの場合、悪夢をみたあとの目覚めは非常に悪く、焦燥感がこみ上げてきます。夢をみた翌日は仕事に集中することができず、不眠障害もあります。

 

<Mさんと父親殺し>

Mさんは6歳のときに父を亡くしています。父が死ねばよいのに、と子ども心に願っていたことが本当になり、罪悪感を持ってしまいました。

母の愛情を勝ち得たものの、そのときからMさんは、「父親殺し」というレッテルを自分に貼り付け、それがいつもつきまとっていました。

子どもが成長して男らしさを獲得するためには、母親への愛着をたち切り、父親に同化することが必要ですが、Mさんは、この葛藤を乗り越えることができませんでした。妻に依存しているのは、その副作用のようです。子どもの頃は母の愛情に包まれ、母は自分のいいなりになってくれました。自分の思いどおりにならないときは、その対処方法が分からず、口をきかずに不機嫌になりました。

現時点で、長男もMさんと同じようなエディプスコンプレクスを体験しています。すなわち、父を憎み母に取り入っている状況です。しかし、Mさんはそのことに気づいていません。

悪夢を見るのは「父親を殺してしまった」という深層心理が夢となって表現されたと解釈できます。そして、子ども会の活動は、自分の罪滅ぼしであり、救いを求めているのかもしれません。

 

<息子以外の家族から孤立のA子さん>

夫・娘・母から孤立し、息子に頼り切っています。実母、夫に対しては嫌悪感があり、将来に対する不安もあります。

A子さんは気丈な母に対して苛立っていました。父が母に優しい言葉をかけると母に嫉妬しました。母のかわりに父のお世話をしている自分に満足し、母の前で父に甘えることがしばしばでした。

思えば、母の料理がまずいとか、母が女らしくないとか、しばしば母を攻撃していました。

一方、男性に対しては寛容で甘えることもでき、つくすタイプと友達から言われました。

Mさんとはとても気が合い、結婚前は、亭主関白でない、何でも話せる人、という印象でした。甘えるとMさんは喜んで自分の言うことを聞いてくれたそうです。

しかし現実の家庭生活では、Mさんの不機嫌さに呆れ、「嫉妬深い夫」に失望しています。

その反面、息子が自分を慕ってくれることで、彼女のエレクトロコンプレクス(女の子が父親に恋焦がれ、母親に嫉妬する心境)の葛藤が再来しているのです。

母を嫌悪する罪悪感から、長女を受け入れようとするのですが、長女のエレクトラコンプレクスの前では、受け入れてもらえず、拒否されています。

<父を無視する長男>

まさに父から愛されている母を奪いとろうとしています。勉強に部活に頑張っている長男は、とても疲れています。

自分は母の気持ちがよく分かっている。物分りの悪い父より自分の方がずっと頼りになると母にアピールします。

父に対しては挑戦するかのように無視して、母が自分に尽くすことを見せつけようとします。

<父を虜にしたい長女>

父を虜にしたい。冷たい母よりも自分の魅力で父と仲良くしたい。

父母が仲良く話していた記憶はない。父が寂しい気持ちを満たされていないから子ども会に行っていると考えています。

母は兄(長男)には関心があるけど、自分には無関心、と友人や付き合っている男の子に言っています。

我が家の実権は母が握っており、寂しい父は自分を可愛がってくれるから何でも頼めるいい関係だとも考えています。

エレクトロコンプレクスでは、父に愛されている母が自分の敵であり、父こそ最愛の人となります。若い女性は、無意識に父の前でポーズをとります。しかし、母にとがめられることで、より母に対する憎しみが強くなります。

<父親を拒否してきた祖母>

夫が病弱のため、専門職として働いてきました。娘(A子さん)の面倒を見られなかったことに後悔しています。

娘が夫の世話をしてくれることに感謝し、同居してくれる娘の夫(Mさん)に二世帯住宅の頭金を提供。男勝りであることは自覚していますが、職場で男性が側に寄ると、ぞくっとしてしまい、男性恐怖症かもしれません。

祖母は父親の愛を獲得することに失敗しました。父から否定されたと思い、思春期にはその反動で、父がくさい、父の風呂のあとは入らない、父と食事をとらない、父を拒否し、女らしさというより男らしさを身につけ、男性が近寄らないようにしてきました。エレクトロコンプレクスで父親の愛を獲得できなかったための防衛としての生き方といえます。

精神分析的解釈は深層心理的なところが重要です。私の個人的見解として理解していただければ幸いです。