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クレーマーになりやすい人たち

2009/10/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

精神疾患を発症する人達の話をきいていると、発症にいたる要因が家族に起因していることが多々あります。

彼らのカウンセリングをしていく過程で発症にいたったルーツを探し当てることはまるで謎解きのようです。

 

女性に怒りの感情を爆発させるT子さん

国立大学卒のT子さん。公務員の管理職。仕事に対しては積極的で危機管理能力が高く、将来のエリートコースが保証されている優秀な方です。

しかし彼女は女性に対して強い怒りの感情を持っています。

男に甘える女の特技をかさにして仕事をさぼる。職場を婚活の場と豪語している。職場恋愛、不倫。子ども優先で仕事は二の次。空気が読めずに発言したことを自分で可愛いと思い込む。男から可愛いと言われることで喜び、モテる女と思い込む。男性を挑発するような服を着る。中年女性は他人の迷惑を省みない。電車の席取りが見苦しい。男性の誘いにすぐ乗る。男性に都合の良い女になる。

T子さんはこのような女性を蔑視し、身近にそういう人がいるとイライラし怒りの感情を爆発させるのです。

直接本人に対して感情をぶつけることはしませんが常に怒りの感情を持ちながら生活しています。

優秀なT子さんのかくれた感情は時としてクレーマーに変身します。

店で買物をするためレジで並んでいた時のことです。突然、若い店員が閉まっていたレジを開け、「次の方どうぞ」と声をかけました。すると、T子さんの後ろに並んでいた中年女性がさっとそのレジにいき会計をすませてしまいました。

「これはルール違反です!」

心の中でつぶやきながらT子さんは怒りがこみあげてきました。

「私が次の番なのに……。中年女性は知らん顔をしてレジをすませ、サッサと帰ってしまうなんて。若いレジ係も客の対応を分かっていない」

家へ帰っても怒りは静まりません。

「やっぱり女なんてこんなものだ」と考えても、だんだん腹がたってきてついに店の苦情処理係に電話をしました。

「さすが苦情処理のプロですね。あやまり方がプロなんですよ。苦情を言ってスッキリしました」

カウンセリングでのT子さんの弁です。

 

強い母親の影響

T子さんはなぜ女性に対して攻撃的でいつも不満や怒りが強いのでしょうか。

彼女の家族、特に母親がキーパーソンでした。

母は良家の子女で名門女子大卒。父も有名大学卒で大手企業の役員。両親はお見合い結婚です。

父は母に対して自分の身のまわりの世話をすることと教育ママになることを求めました。

母は父に逆らわず、子どもたちにも父の言うことは絶対としつけてきました。

母はある意味しいたげられていたのですが、子どもたちがはけ口となりました。また、母は父が求める女性観を子どもたちに植え付けました。

子どもたち全員が社会的に高い地位についていることは母の賜物です。しかし、偏った女性観はいまやT子さんにもしっかり受け継がれました。特に性的な行動をとる女性に対しては彼女の怒りが強くなります。

そして男性不信にも陥っています。「女を物色している男は、女の餌食になり、しかも騙されていることに気づかない間抜けな男」と言い切ります。

今も母は恋愛ドラマをみながら「あんなふしだらな女は不幸になるだけ」「品のない言い方をして男を誘うのね」とT子さんにつぶやくのです。

淑女であり続けることと女性性の否定を刷り込まれたT子さんは女性を謳歌することができません。服装は地味で、男性に対する自然な思慕は悪女の感情で女を破滅させるとまで思い込んでいます。

T子さんはそんな母から性的抑圧をされてきたと感じ、混乱しています。そんなふうに育てた母を憎んでもいるのです。

彼女の自然な性は男性を好意的に受け入れる気持ちも芽生えています。可愛いといわれたい、愛されたいという気持ちもどこかに潜んでいるのです。

母と同じ価値観で生きているT子さんの苦悩は日々、母の言動に挑発され怒りとなって表出されています。

 

反省なきクレーマー行動

T子さんはトラブルメーカーです。恒常的な怒りの感情は周囲を巻き込んでいます。先ほどのレジのような出来事があれば、咄嗟にクレーマーとなります。それは悪意というより、母の教えに従ったしごく当然の行動です。自分が言い過ぎたなどと反省することはありません。

「何もそこまでしなくとも……」などと言われれば、益々怒りが強くなり手におえなくなります。

職場でもT子さんの部下は何が正しいのか理解できず自分が変なのかなと疑心暗鬼になってしまうのです。

社会的地位が高い人で潜在的怒りの強い人は特に厄介です。実力で得た地位と人格は同一ではないのですが彼女のようなタイプは学力も一流、人格も一流だと思い込んでいます。

反省する思考がないため健康な人格を持っている人が傷ついてしまいます。

 

傷ついているT子さんの心

T子さんも実は傷ついています。彼女の怒りが強いのは両親の影響が大きく関わっています。父に愛されていないと感じた母は子どもを普通に愛せなかったのです。母を慕うT子さんに対して女性としての節度、礼儀作法、男性に従うことのみを強要し、彼女の甘えたい気持ちを受け入れませんでした。

母は、甘えさせると自立心のない女性に育ってしまうと考えていたのです。まさか娘が自分に怒りや憎しみの感情を持っているなど思いもしませんでした。

愛を受け入れられないまま育った人は親に奉仕をします。親に認められたい。親に感謝されたいと願うからです。受け入れられていなければいないほど、母からのレッテルを守り抜き、母の望む女になろうと努力します。T子さんは品のよい節度ある女性を母の前で演じ、愛されようと必死なのです。

しかし、一歩外に出ると、たまった不平不満をぶつけます。特に幸せな人を許せないのです。T子さんが怒りをぶつけたくなる女性は、裏をかえせば幸せな女性です。人の幸せを喜ぶことができないのは怒りがそれだけ強いからです。

 

怒りの強い人の特徴と私たちにできること

T子さんのような人は自分の気持ちを理解してほしい欲求がとても強いので、不自然に謙虚な話し方をします。

しかし聞いている相手にはどうしても彼女の一方的な感情が理解できないために「ちょっと変な人、気遣いのない人、ワガママ、大人気ない」という印象を持ってしまいます。

そのような印象を持ちながら適当に会話を続けていくと、本人は「私を否定した。気遣いのない人、わがまま、自分勝手、人の話を聞けない人」と感じてしまい、逆ギレをするのです。

残念ながらT子さんのような感情はタテ・ヨコ・上下、左右に置き換えても、なかなか理解できないのです。その結果、逆ギレされ、傷つけてしまう結果になります。

彼女たちには次のような特徴があります。

①人の心と交流したい

②いつも一緒にいたいと拘束する

③傷つきやすい(否定されることに敏感)

④孤独になりやすい(理解してくれる人が少ない)

⑤喜怒哀楽が人並み以上優れている(感情の起伏が激しい)

⑥過去の傷ついたことにこだわり今の問題と一致させる。

⑦人の行動、顔色、言葉から多くの情報をつかむのが得意

⑧スキンシップが好き

⑨人の深層心理まで読み取る(妄想好き)

⑩幸せになることを拒否する

⑪人を信頼する力がない

⑫現実を直視できない

 

私たちにできることは、怒りの強い人をかぎ分ける力を持ち、安易な受け答えをせず、ある程度、距離を持つことかもしれません。