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(続)問題行動を起す人たち

2009/08/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

「自分の人格を否定するような社員がいる。このような迷惑社員を採用している人事に問題がある」と人事課長に面談の申し入れがありました。

●経緯

リーダー役のF君(37歳)が新人社員のA子さん(23歳)に「先輩は○○系キャラですね」と言われたことがきっかけです。

「それはどういう意味だ!」とA子さんにつめより、「仕事もできないくせに皆に甘えてさぼっているような奴は社会人として失格だ」とつけ加え、今から「人事へ行ってくる」と言い残し、人事課長との面談に至りました。

当日は人事課長がF君の言い分を聞き、本人は落ち着きを取り戻したようでした。その言い分はA子さんを異動させること。それが無理なら、彼女が辞めるか自分が辞めるというものでした。

F君は翌日からトイレで「お前なんか死ね。殺してやる」と大声で叫んだり、仕事中にも「死ね」とつぶやくようになりました。仕事にも集中力がなくなり、常にA子さんに敵意を持った言動をします。ついにA子さんは休職してしまいました。

そうするとF君はいつもの彼に戻りましたが、職場はギクシャクしはじめ、みんな彼を避けるようになりました。

F君は再度人事課長に面接を申し入れます。「自分の指示に従わず協調性のないメンバーとは仕事ができない。自分かメンバーの異動を考えてほしい」と。

F君は職場を振り回しても、何事もなかったかのように振る舞っています。

人事部からF君の部下のカウンセリングを依頼され、1人50分のカウンセリングを行いました。

「彼の突然の暴言とA子さんが休職した後の冷静さにギャップを感じた」

「彼に話しかけることがこわくなった。いつか私たちも怒鳴られるのではないかと不安な気持ちで仕事をしている」とみな口をそろえます。

3日後、人事課長から連絡がありました。「カウンセラーが自分の人格を否定するようなことを部下達にいいふらしている」「チームの意欲が沸かないのはカウンセラーが悪いからだ。辞めさせてほしい」とF君が言ってきたというのです。

人事課長も途方にくれていました。周りの人たちは上司も含めて腫れ物にさわるようになり、F君は暴君と化してしまったようです。

本誌5・6月号に紹介したS子さん、7月号の「問題行動を起す人たち」そして今回のF君も、カウンセラーの立場からみると次のような共通点があります。

①カウンセラーが緊張し、クライエントの感情に巻き込まれる

話の内容は転々とし、現実的なことを話しているのかと思うと急に空想的な話を始め、衝動的な感情で一方的に怒りをカウンセラーにぶつけてきます。

②話をしていて「あなたは誰なの」という気持ちになることがある

現実の世界に生きている実感がなく、まるで宇宙人と話しているように感じることがあります。激しい口調でカウンセラーをののしることがあり、その時は、ふとカウンセラーとしての私を試しているのかなと思います。

瞬間的に湧き上がる感情にとまどい生きることの辛さを訴えているようにも思えますが、カウンセラーも生身であり渾身の力で傾聴することに限界を覚えることがあります。そんなときは距離をとっています。

③カウンセラーを監視し、心を敏感に読み取る

話を聴いている最中に「先生は私のことを嫌っているでしょう。さっき私の話を遠ざけたし迷惑だから聴きたくないんですよね」と言われることがあります。

自分が感じたことを「カウンセラーが言った」と受け止め、自分の感情の世界とカウンセラーの気持ちを混同して同一であると断定してしまいます。それも、カウンセリングが終了した数日後だったりします。

そのときは私も疲れていたのかもしれません。そういう意味でクライエントはカウンセラーの心を抉(エグ)り出す鋭い感性を持っています。

④一見、普通に見えるクライエント

5・6月号のS子さんのようなタイプは一見して普通の成人に見えます。

しかし、自分と他人の境界があやふやな部分があり、「自分の気分が悪いのは他人のせいだ」と思っています。他人のせいではないことに気付くのは長いカウンセリングプロセスの中であり、かなり時間がかかります。

⑤アクティブな行動をする

自分の感情を周囲に理解されるように訴えることが苦手で直情的に行動を起こします。たとえばS子さんはささいなことで訴訟沙汰にしたり、7月号のEさんは上司にクレームのメールを送り、さらにCCで職場全員に送りつけました。

これらの行動を、彼らは困った行動とは考えません。カウンセリングで話す彼らの行為に対して他人事のように話し、ある種の快感を得ているようです。

⑥幼児性

彼らの行動、言動はとても純粋に感じられる時があります。深謀遠慮のたくらみはなく、あくまで自分の世界観の結果の行動です。

例えば「先生、プレゼント」と差し出す彼らの仕草などは、あどけなさを感じてしまいます。       (続く)