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(続)解雇とS子さんの葛藤

2009/06/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

訴訟をあきらめたS子さん

IT関連の情報システムに精通し、複数の外国語を使いこなせるS子さん。その高度なスキルに対してA社は好条件で待遇してきました。しかし、「もっと積極的に仕事の範囲を広げてもらわないと困る」の一言から感情的なしこりができ退職に至りました(前月号に掲載)。

「A社を訴えます!」と怒りがおさまらなかったS子さんでしたが、その後、両親の説得で訴訟をあきらめました。両者納得の上での退職ということで解決金も受け取っており、訴えても勝ち目がないことにようやく気づいたようです。

現実的に考えればすぐに答えが出ることなのですが……。S子さんの場合、理性よりも感情が先になってしまい、ささいなことが大きなトラブルに発展してしまいます。学生時代にはこんなエピソードがありました。

 

海外留学滞在先でのトラブル

海外留学した時のことです。静かな個室で勉強できることをホームステイ先の条件にB旅行社に手配をお願いしました。

1カ月が過ぎ、海外での生活にも慣れたある日のこと、日本人留学生の団体が彼女のホームステイ先にやってきました。その夜、オーナー夫婦は歓迎パーティーを開き、酒もはいって大騒ぎしてしまいました。

S子さんは騒音で目が覚めてしまい、「こんな夜中に迷惑です」とオーナーにクレームを言って、その場はおさまりましたが、イライラして寝つけません。

翌日の授業は寝不足で集中できず、さらに気分がいらつきました。腹の虫がおさまらないS子さんは、日本大使館に電話し、ことの経緯を説明。旅行社を通して契約したホームステイ先が契約違反したこと(静かな個室で勉強が出来る環境)ホームステイ先として登録しているが、今後のことを考えて抹消すること、新しいホームステイ先を紹介し、違約金を支払うこと、を伝えました。

「そういうことは旅行代理店に言ってほしい」と大使館側は応えますが、S子さんはくいさがります。

「契約を守れないホームステイ先を野放しにするのは日本人をバカにすることになりますよ。それでもいいんですか。日本政府としても厳重に注意するべきです」と。結局、日本の旅行代理店に国際電話をし、昨日の出来事を伝えました。

担当は平謝りで、翌日、責任者から、ホームステイ先と日本人留学生に厳重に注意し、二度とこのようなことはないようにする、という電話がありました。

しかしS子さんは、「契約違反をしたのは、ホームステイを紹介したそちらの責任」とはねつけ、新しいホームステイ先の紹介と引越しにかかる費用と、違約金を要求し、帰国した際には訴えるとも付け加えました。

ホームステイ先は、「確かに迷惑をかけたが、日本大使館や旅行代理店にまでクレームを言うことではないだろう。こちらも迷惑だから出て行ってほしい」と怒っていたそうです。

「静かな環境であるという契約だったはずなのに違反をしたのだから、違約金を支払うのは当然でしょう」S子さんも反撃します。もうここからはお互いに一歩もひきません。

結局、旅行代理店は、S子さんの要求をのむことで決着しました。

 

見知らぬ外国人男性との出会いが…

海外留学も終わり帰国する直前、S子さんは、ある地方都市へ小旅行に出かけました。

その時のことです。夕暮れ時に湖畔のベンチでくつろいでいた時、突然、現地の男性から「ニホンジンデスカ?」と声をかけられました。

うなづくと、彼は数年前に日本で仕事をしていたことなどを懐かしそうに話します。そして少しうちとけたところで、「この辺りを散歩しませんか?」と誘ってきました。

一瞬、どうしようかと迷いましたが、見知らぬ外国人を警戒したS子さんは断りました。が、ホテルの部屋にもどってみると急に断ったことを後悔します。

いてもたってもいられず慌てて彼と出会った場所に戻りますが、彼はもうそこにはいません。あちこち探し続けた後、ホテルにもどって部屋で泣きとおしたそうです。帰国前日の夜の出来事です。

帰国したS子さんですが、思いはただ一つでした。

「あの日に出会った男性ともう一度逢いたい」。

思いあぐねたS子さんは3つの方法を考えました。

①インターネットで彼が話した日本に支社を持つ会社を検索する

②出会った地方の新聞の尋ね人欄に投稿する

③もう一度出会いの場所に出かける。

①と②はすぐに実行しましたが、成果はありません。③は費用がかかりすぎるので迷いましたが、意を決して出会いの旅に出かけたのです。

1週間の滞在でしたが彼との再会はかないません。それ以来、S子さんはあの一瞬「NO」と言った自分を責め続け、今も憂鬱な気持ちを引きずっています。

高度な仕事のスキルを持ち、情熱的で小悪魔的な魅力にあふれ、正義感の強いS子さんですが、つらく、苦しい日々のサポートと現実的な判断のことなど、私の力も試されているのかもしれません。