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挫折するな新入社員

2009/04/01
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みらい総合心理研究所 所長 岸井たみえ

 

何のために働くのか?

私が新入社員研修を受けたのは30数年前のことです。社会人のスタートを切った私は「何のために働くのか?」を考えながら仕事をしていた記憶があります。

「働く」ことを考えると「食べるために働く」という言葉が一番合点がいきます。

大不況下のこの時世ですから「仕事がみつかっただけ幸せ、働けるだけましだ」「辞めてしまったら次の仕事がないので何とかしがみついていくしかない。仕事が辛いとか、上司が、給与が……なんて文句を言っている場合ではない。家族がいる、ローンを抱えている、我慢してでも働く」と考えている人が大多数かもしれません。

昨年の新人研修で話をしたとき、「何のために働くのか」を質問すると「お金のため、生きがいをみつけるため、夢の実現のため」という答えが大半を占めていました。

新人は昔の私のように理想と現実に悩みつつも、いまや「転職するのが大変だからここで働きます」という考えに変わりました。

「やっぱ現実ですよ!!」「なんだか急に大人になっちゃったね」社会人1年生との会話です。

 

夏目漱石「それから」の代助の労働観

働くことを考える時に夏目漱石の「それから」の代助を思い出します。

「何故働かないのかって、そりゃ僕が悪いんじゃない。つまり世の中が悪い。働くなら生活感のにじみでるようなものではなく、もっと精神的なものです。明日の米のために働くのは卑しい」という考え方で30近くになっても親にパラサイトをしながらの生活している代助です。

精神的向上や神聖な仕事を求めるのであれば芸術家や学者などの職業に就けばよいと思うのですが、そうせずに親に依存しています。高学歴で優秀ですから様々な口実を設け「働いてこそ一人前」という親の考えをかわして生きています。

贅沢品を身につけ、洋書を買い、高尚な思索に想いを馳せ、自分こそブルジョワ階級であることを顕示します。

30歳を過ぎた代助は人妻を愛してしまい、親の逆鱗に触れ勘当されます。人を愛した代助は明日の米を買うために働かなければならなくなったのです。

代助の言う卑しい労働を強いられ、働くことの現実を知ったのです。

小説はここで終わっています。その後の代助にとって、人を愛するための労働にこそ精神的向上があり、だからこそ労働が神聖であってほしい。明日の米を買える喜びを感じて欲しいと思います。

 

働き甲斐

「それから」の代助が持っている「働く」という価値観を新人研修で紹介したのは新社会人の一人として「働く」という意味を考え抜くための材料です。あいまいな考えで仕事をしていくと代助が恋人を愛した後に「卑しい労働」に身を置いた自分を責めることになると思うからです。

汗水を流しお金を得るという現実に立ち向かうためには自分の生き方を整理することから始めます。「生きがい」と「労働」が一致していれば「働き甲斐」につながり自己成長できます。

カウンセリングルームでのクライエントは理想と現実にあえいでいます。人間ですから理想、空想、幻想を抱きます。

しかし、それだけでは生きていけません。現実に突きあたった時に現実逃避し、無限に広がる理想郷に身を置き、「食べるために働く」ことを拒否し、社会を否定します。人のせい、世の中のせいにし、怒り、不満の毎日を送ることになります。

 

大人になるということ

理想だけでは生きていけない現実を知ることは大人になるということです。社会人となることも大人になることと同義語です。社会とは、自分以外の他者と繋がっていくということです。

人間として「他者に認められたい」という欲求を叶えられるのも社会の場であり、認められる一つのツールが「仕事をする」ということではないでしょうか。

働きながら人とコミュニケーションをとり、自分を認めそして他者を認め「互いに認め合う」ことを知るのです。

このような関係性を築くことができるのは理想をより現実的にしていく大人力が必要です。子どものままで生き続けることはできないのです。いつまでもディズニーランドの夢の世界では生きてはいけません。

ディズニーランドに入る為にはお金が必要です。閉園時間は決まっていて一歩外に出ると混み合う道路や満員電車が待っています。現実は待ったなしです。

子どもは現実の世界でもミッキーやミニーは存在していると思い込んでいます。人は誕生し混沌とした世界観を持ちつつ成長しながら現実と折り合いをつけています。

大人になる過程は挫折し、起き上がることを繰り返していきます。挫折する怖さをいつまでも回避していると大人になれません。

<事例>

1.新入社員のA君は新人研修を終えた後、管理部門を希望したにも関わらず営業に配属。やる気をなくし、1日目に退職してしまいました。

2.新人社員のB子さんは旅行代理店に入社し先輩女性から「何度も聞きにこられても困るわ。自分で考えることも大事じゃない」と言われ傷つき次の日に退職しました。

3.新入社員のC君はエネルギッシュでリーダーシップを発揮し研修中も皆を引っ張っていく力を持っていました。期待の新人で注目を浴びていました。配属先は営業です。取引先の部長から製品のオーダーがあり、初受注できたのです。見積書を提出し、取引先から正式なオーダー依頼がきました。喜んで上司に報告しましたが彼は翌日退職したのです。

見積書の数字の0が1桁違っていたために、100万円の損失を出す結果となり上司に報告ミスを怠ったことを咎められたことが原因でした。

4.新人社員のD子さんは明るく、てきぱきと仕事をこなします。ミスをしないという強い信念があり、その日の仕事は残業をしてでも終わらせていました。

自信もつき周囲からの評価も高く仕事が生きがいになっていました。

ところが入社10カ月目に上司から呼び出され、残業が多いので減らすように言われました。そして自分を否定されたと感じ退職してしまいました。

 

新人の失敗

失敗したりプレッシャーをかけられたり、強い口調で注意されたり自分の思い通りにならないと逆ギレしたり開き直ったりと様々な新人像があります。

ミスをして怒られるのは誰しも怖い。しかし長い目でみれば本人の価値や信頼の向上になっていきます。

C君の場合は上司に報告をせずに一人走ったのも学生時代の名残で目立ちたい、ほめられたい、という心情からのものです。

上司は部下の失敗をある意味想定できるものです。上司も失敗を経験しているからです。後から挽回できることを知っています。上司は失敗したことではなく失敗した後の対応をみています。

失敗し、負の経験を積み重ねることで、人はやがて社会人として生きていく力を得るようになります。そうしたことを通じて、自分の存在が社会の中で認められるのではないでしょうか。