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山田人事部長の憂鬱(その2)

2007/08/01
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メンタルヘルス対策を導入するときの考え方

前月号に紹介したような経緯をたどり、山田人事部長は、職場からメンタル不全者を出さないための社内整備に取り組みはじめました。

社員に産業医と保健師を利用するように告知し、カウンセラーも週1日ですが来社し面談室を設置しました。

しかしなかなか効果はあがりません。メンタル不全者はむしろ増加し、社員もせっかく設置した面談室を利用しません。

そこで山田さんは、社員にアンケート

で利用しない理由をききました。その結果、つぎのような社員の本音がきこえてきました。

自分の悩みを社内産業医に相談すると人事査定に影響が出るのではないかと不安。

自分で解決すべき問題を相談する精神面が弱いと誤解されてしまう。

職業経験のない若いカウンセラーでは仕事上の話を理解してもらえない。

 

社員の率直な意見ではありますが山田さんはショックを受けました。そして、人事部というセクションの重さを痛感したといいます。

そして、これを機会に人事のイメージアップを図るとともにCSR(企業の社会的責任)の概念に基づいたメンタルヘルスケアを導入しようと決断したのです。

 

企業の社会的責任(CSR)の概念

企業は質の良い製品とサービスを提供し、顧客満足度を上げ、業務の実績をめざします。こうした企業活動は社会的にも意味をもち、環境、地域社会、取引会社、株主、行政機関との関係を良好に保ちます。

このような考え方を社会的責任(CSR)といいますが、最近は社員への対応も取り組まれつつあります。社員もステークホルダーだと考える企業が増えているのです。

先進的な企業はCSRの概念に基づき、社員の労働衛生やメンタル不全者を出さないための積極的なメンタルヘルス対策に取り組んでいます。

そうした取り組みが企業の社会的責任を果たすことにもなり業務、生産性の向上にもつながります。

当研究所へ来所された山田人事部長は温厚で社員に対する熱い想いを持たれた方でした。

しかし、人事としてのEAP(復職支援プログラム)の具体的な取り組みはなかなか前に進まなかったのです。

 

メンタルヘルス対策には2つの側面がある

メンタルヘルス対策には2つの側面があります。メンタル不全者が出たときのリスク管理マネジメントと、社員のストレス耐性能力を高めるストレスマネジメントです。

<リスク管理マネジメントと人間性>

メンタル不全者が出ると運営や人事強化のための対応などの影響が出てきます。相談を的確に把握することで各職場への影響を最小限にとどめます。

そのためには産業医、保健師(健康保健組合)、カウンセラーを配置することです。

しかし、このリスク管理システムを整えても社員が利用しなければ十分な効果は望めません。

この仕事は人に関わることですからカ

ウンセラーはメンタルヘルスをよく理解し、専門的な知識を有していることが必要ですが、それだけではなく、人間愛を兼ね備えていることが最も大切です。

前述の社員が利用しないというアンケート調査結果には「カウンセラーが企業に勤めた経験がなく、若くて仕事上の話を理解してくれない」という指摘がありました。

確かに会社勤務経験のあるカウンセラーの方が組織内の問題点を理解しやすいでしょう。

又、「若いカウンセラーである」ということはカウンセリングを受けた社員にとって「自分の気持ちが受容されたとは思えない」という感想だと思われます。

実は、このような指摘は、職業経験や年齢の問題だけではないのです。

カウンセラーには、人と向き合う姿勢に裏打ちされた職業倫理観を持ち合わせているかどうかが問われています。

リスク管理マネジメントはメンタルヘルス不全者個人と向き合い、人対人の人間性にふれあうことです。

だからこそ、企業の人事部はカウンセラーを採用する時は、その人の「人間性」を考慮してほしいところです。

 

このような話をした後、山田さんは社内の産業医、保健師、カウンセラーの採用面接を実施するときに、メンタルヘルスの専門知識が高くメンタル不全者に対して「誠実で自分を愛せるように他者を尊重できる能力」を持っている方かどうかを重視したといわれました。

ある意味、管理する側の立場でメンタル不全者の援助をする仕事である以上、特に人間性を問われる職種なのです。

<ストレスマネジメント>

メンタル不全者の増加は、リストラ、早期退職、報酬カット、目標成果主義などによる社内競争の激化などの結果でもあると考えられます。

職場ではストレス要因が増加傾向にありますが、その改善とともに社員のストレス耐性能力を高める環境を作り、人材を育成するマネジメントも求められます。これは企業経営、経営管理、人的資源管理そのものです。

 

山田さんの会社が主に取り組んだこと

こうしたメンタルヘルス対策の2つの側面を理解されたうえで、山田さんは本格的に対策を導入しました。そのポイントはつぎのとおりです。

 

A「部下をうつにさせないための管理職セミナー」の実施

 職場のストレス要因

 ストレス調査票

 ストレスが高くなったときの行動

 適応障害とは

 

B「コミュニケーションスキル研修」の実施

 自分の傾向を知る

 エゴグラムの活用

 相手を傷つけずに自分の意見を言  

う伝え方を知る

 

C「うつ病対策」

 うつ病は心の風邪か

 うつの症状

 うつ病になりやすい性格

 現代型うつ病の特徴

 うつ病患者への対応

 

D「メンタルヘルスバランスシート」で社員のストレスチェックを実施

①職場→仕事の量,質,裁量権,環境

②生活→食・運動などのライフスタイルと本人の環境充実度

③心身→心理面、身体面の状態と本人の性格傾向

  チェックシートの結果は基本的に自宅に郵送する。

本人がストレスを自覚することで健康管理を自主的に行う。

メンタル不全者にはカウンセラーからの詳細なコメントでケアしていく。

 

E「他の取り組み」

 産業医による健康相談会

 電子メールによるカウンセリング

 

メンタルヘルス対策は、2つの側面を認識したうえで、人事部としての役割を明確にして、先行しすぎないこと、社外の専門家と連絡を密にしてガッチリと組んでいくこと、それがメンタル不全者を出さないことにつながると山田さんは考え、また、人事という役職がメンタル不全者に影響力があることも理解されました。また、メンタル不全者との距離感をどう保つかということも課題であると自覚されました。

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今回はメンタルヘルス対策を導入するときの考え方を紹介しました。

次回は「管理職研修」の具体的な活用法、事例を紹介します。