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人事部長の山田さんは社員数600名のIT関連企業に勤務しています。
人事部長に就任して3年目になります。
会社はITバブルがはじけた翌年から新卒採用は少なかったのですが、業績が上向きになりはじめたので、今年から新卒者を多く採用しています。

兆候

ところが、最近、うつ病で休職をする社員が増加していることに気づきました。
先日に引き続き今日も「休職3カ月を要する」という社員の診断書を渡されたところです。
今月はもうすでに3名。いずれもバリバリの30代です。
休職者の状況を本人の直属の上司から聞いてみました。

<Aさん(37歳 役職なし)>
自分に与えられた仕事を淡々とこなすタイプです。
3年前からは、プロジェクトのチームリーダーとして活躍。
自分の業務以外に部下の指導もしなければなりません。
仕事は超多忙で、勤務時間外に自分の業務を消化する毎日です。
残業時間は月に80時間から100時間に及びます。
その頃から睡眠障害を訴えるようになりました。
朝3時頃に目が覚めてしまい、そうすると、以降は眠ることができなくなっていきました。
40代上司からは残業時間が多いことを指摘され、「控えるように」と言われました。
しかし、どのように仕事量を分担してよいか判断ができず、納期が迫っているため土日出社し、サービス残業をする結果になりました。
ネットでストレスチェックをした結果、ストレス度があまりにも高い得点だったため、翌日精神科を受診。
その結果、うつ病と診断され、服薬しながら勤務を続けていましたが、その6カ月後に休職に至りました。

<Bさん(30歳 入社4年中途採用)>
Bさんのプロジェクトチームは10名で40代後半の上司と30代が8名。
Bさんは当時26歳で20代1名という年齢構成になっていました。
入社当時から雑用が多く、会議室の設定、会議議事録の整理、業者打合せ連絡日設定が主な仕事でした。
Bさんからみると、先輩たちはプロジェクトに関わっており、スキル向上のために日々生き生きと仕事をこなしているようにみえました。それにひきかえ、Bさんはいつまでも部下ができず、仕事は先輩の後始末ばかり。スキルアップをしたいと思っていても現状は変わりません。やがて、自分だけが取り残されているような気がしてきました。思い切って「他部署へ異動してスキルアップのできる仕事をしたい」と上司に相談しますが、「今はガマンしてくれ」と言われました。Bさんは永遠にこのままの状態が続くのではないかと思い、絶望感を強くし、その1カ月後に休職となりました。

<Cさん(34歳)派遣社員>
雇用形態が変わり、同じ職場に派遣社員がひとりだけの職場に配属されました。
正社員と非社員が混在した職場であるためコミュニケーションがとりづらい職場です。
隣の席の人はCさんより2歳年上ですが、フレックス制度を利用しているため会う時間がありません。Cさんの仕事は、責任者の指示を受けるだけです。毎日がこうして過ぎていきます。
やがてCさんは、自分の置かれている状況に不安を覚え、自分が必要とされているのかわからなくなってしまいました。同時に、仕事で差別されているような気持ちにもなってきました。
派遣会社のアドバイザーに現状を訴えてみたら、「直接上司に相談してほしい」と言われ、「契約は1年後に終了する。それまでなんとか仕事を続けてほしい」とまで付け加えられました。
Cさんの職場ではシステムエンジニア不足の実態があります。この言葉を聞いてCさんは行き場所を失ったような気がしました。Cさんは契約期間を7カ月間残し、欠勤が続いています。
現在は抗うつ剤を飲み自宅で療養中です。

最悪の予感

現場の実態をリサーチした結果、次の問題点があることがわかりました。
現場では、うつの疑いのある社員が出たとき、どのように対処していいのか分からず、現場責任者にも戸惑いがありました。彼らは、なんとか自分だけで解決したいと考えてしまい、
時間だけが経過していました。このままでは、社員の自殺という最悪の状況を作ってしまう……
山田さんは、実態を知り慄然としました。

部長の決断

そして、職場にメンタルヘルスを導入することを決意し、ただちに外部のEAP(従業員復職支援プログラム)業者と打合せをはじめました。
打ち合わせの結果、ストレスマネジメント研修に会社をあげて取り組むこととし、
次の3段階のステップを職場で実行することとしました。

第一段階
管理職にうつ病についての知識を知ってもらう。
うつ病を知ることで管理者は部下の変化に気づくことができ、早期に対処できる。

第二段階
社員全員がストレスチェックシートの記入をしていく。
生活・社会・心身の状態を一人ひとりが見極めライフスタイルを高めていく。

第三段階
人間関係の向上のためにコミュニケーションスキルの研修を実施する。
こうして企業の活性化と社員の不安、悩みを解消するために、メンタルヘルスの導入は決定されました。

参考:部下の行動から読み取るうつ病のチェックポイント

① 作業効率が悪くなり遅刻欠勤が多くなる。
② 残業時間が月に80時間以上になっている。
③ 洋服が乱れてくる。
④ 暴力的な発言が多くなる。
⑤ 口数が少なくなる。
⑥ ミスが多くなる。
⑦ トイレの回数が多くなる。
⑧ タバコが酒量が多くなる。 

見えてこない効果

山田人事部長は、職場からメンタル不全者を出さないための社内整備に取り組みはじめました。社員に産業医と保健師を利用するように告知し、カウンセラーも週1日ですが来社し面談室を設置しました。しかしなかなか効果はあがりません。

メンタル不全者はむしろ増加し、社員もせっかく設置した面談室を利用しません。
そこで山田さんは、社員にアンケートで利用しない理由を聞いてみました。
その結果、つぎのような社員の本音がきこえてきました。

①自分の悩みを社内産業医に相談すると、人事査定に影響が出るのではないかと不安。
②自分で解決すべき問題を相談する精神面が弱いと誤解されてしまう。
③職業経験のない若いカウンセラーでは仕事上の話を理解してもらえない。

社員の率直な意見ではありますが山田さんはショックを受けました。
そして、人事部というセクションの重さを痛感したといいます。

CSRとメンタルヘルスケア

そして、これを機会に人事のイメージアップを図るとともにCSR(企業の社会的責任)の概念に基づいたメンタルヘルスケアを導入しようと決断したのです。

●企業の社会的責任(CSR)の概念
企業は質の良い製品とサービスを提供し、顧客満足度を上げ、業務の実績をめざします。
こうした企業活動は社会的にも意味をもち、環境、地域社会、取引会社、株主、行政機関との関係を良好に保ちます。このような考え方を社会的責任(CSR)といいますが、最近は社員への対応も取り組まれつつあります。社員もステークホルダーだと考える企業が増えているのです。
先進的な企業はCSRの概念に基づき、社員の労働衛生やメンタル不全者を出さないための積極的なメンタルヘルス対策に取り組んでいます。そうした取り組みが企業の社会的責任を果たすことにもなり業務、生産性の向上にもつながります。


当研究所へ来所された山田人事部長は温厚で社員に対する熱い想いを持たれた方でした。
しかし、人事としてのEAP(復職支援プログラム)の具体的な取り組みはなかなか前に進まなかったのです。

●メンタルヘルス対策には2つの側面がある
メンタルヘルス対策には2つの側面があります。
メンタル不全者が出たときのリスク管理マネジメントと、社員のストレス耐性能力を高めるストレスマネジメントです。

①リスク管理マネジメントと人間性

メンタル不全者が出ると運営や人事強化のための対応などの影響が出てきます。
相談を的確に把握することで各職場への影響を最小限にとどめます。
そのためには産業医、保健師(健康保健組合)、カウンセラーを配置することです。
しかし、このリスク管理システムを整えても社員が利用しなければ十分な効果は望めません。

この仕事は人に関わることですからカウンセラーはメンタルヘルスをよく理解し、専門的な知識を有していることが必要ですが、それだけではなく、カウンセリングを熟知していることが最も大切です。
前述の社員が利用しないというアンケート調査結果には「カウンセラーが企業に勤めた経験がなく、若くて仕事上の話を理解してくれない」という指摘がありました。
確かに会社勤務経験のあるカウンセラーの方が組織内の問題点を理解しやすいでしょう。
又、「若いカウンセラーである」ということはカウンセリングを受けた社員にとって「自分の気持ちが受容されたとは思えない」という感想だと思われます。
実は、このような指摘は、職業経験や年齢の問題だけではないのです。
カウンセラーには、人と向き合う姿勢に裏打ちされた職業倫理観を持ち合わせているかどうかが問われています。リスク管理マネジメントはメンタルヘルス不全者個人と向き合い、人対人の人間性にふれあうことです。だからこそ、企業の人事部はカウンセラーを採用する時は、その人の「人間性」を考慮してほしいところです。このような話をした後、山田さんは社内の産業医、保健師、カウンセラーの採用面接を実施するときに、メンタルヘルスの専門知識が高くメンタル不全者に対して「誠実で自分を愛せるように他者を尊重できる能力」を持っている方かどうかを重視したといわれました。
ある意味、管理する側の立場でメンタルヘルス不全者の援助をする仕事である以上、特に人間性を問われる職種なのです。

②ストレスマネジメント
メンタル不全者の増加は、リストラ、早期退職、報酬カット、目標成果主義などによる社内競争の激化などの結果でもあると考えられます。職場ではストレス要因が増加傾向にありますが、その改善とともに社員のストレス耐性能力を高める環境を作り、人材を育成するマネジメントも求められます。
これは企業経営、経営管理、人的資源管理そのものです。

そして取り組んだこと

こうしたメンタルヘルス対策の2つの側面を理解されたうえで、山田さんは本格的に対策を導入しました。


そのポイントはつぎのとおりです。

A「部下をうつにさせないための管理職セミナー」の実施
①職場のストレス要因
②ストレス調査票
③ストレスが高くなったときの行動
④適応障害とは

B「コミュニケーションスキル研修」の実施
①自分の傾向を知る
②エゴグラムの活用
③相手を傷つけずに自分の意見を伝えるスキルを知る。

C「うつ病対策」
①うつ病は心の風邪か
②うつの症状
③うつ病になりやすい性格
④現代型うつ病の特徴
⑤うつ病患者への対応

D「メンタルヘルスバランスシート」で社員のストレスチェックを実施
①職場→仕事の量,質,裁量権,環境
②生活→食・運動などのライフスタイルと本人の環境充実度
③心身→心理面、身体面の状態と本人の性格傾向

チェックシートの結果は基本的に自宅に郵送する。
本人がストレスを自覚することで健康管理を自主的に行う。
メンタル不全者にはカウンセラーからの詳細なコメントでケアしていく。

E「他の取り組み」
①産業医による健康相談会
②電子メールによるカウンセリング

メンタルヘルス対策は、2つの側面を認識したうえで、人事部としての役割を明確にして、先行しすぎないこと、社外の専門家と連絡を密にしてガッチリと組んでいくこと、それがメンタル不全者を出さないことにつながると山田さんは考え、また、人事という役職がメンタル不全者に影響力があることも理解されました。また、メンタル不全者との距離感をどう保つかということも課題であると自覚されました。

部下をうつにさせないための管理職研修

「仕事は減らせない。しかし社員を増やすことはできない」という状況のなかで山田さんの職場では、うつ病や長期休職の社員が目立ってきました。

以前、「24時間働けますか♪」というコマーシャルがありましたが、栄養ドリンクを飲んでまで働かなければならないムードは昔も今も変わらないようです。
しかし24時間働いていたら体も心もぼろぼろになってしまいます。
このままでは自殺者が出てしまうかも知れないと危機感をもった山田さんはメンタルヘルス対策を導入することを決断しました。

山田さんは「部下をうつにさせないための管理職研修」を全管理職に実施しました。
その概要は次のとおりです。
1.ストレスとは何か
2.ストレスの原因
3.ストレス反応(身体、精神、行動)
4.ストレスを受けやすい人
5.うつ病とは(症状)
6.うつ病になりやすい性格
7.関わり方のポイント
8.気づくポイント
9.予防のポイント
10.休職者への対応
11.休職と復職について
12.信頼関係を築くためのコミュニケーション

●部下の行動パターンを知る
研修では、まず「うつ」になりやすいといわれている
A型行動パターンの人たちの特徴をみていきました。
このタイプは攻撃的な行動にでることが多く、ストレスを強く受け、虚血性心疾患や血圧により脳疾患のリスクが高くなります。
※A型、B型は血液型ではありません。
皆さんもチェックしてみて下さい。
なお、A型が誤りでB型が正しいというものではありません。

<A型のチェックリスト>
①いつも時間に追いたてられている。
②競争心が強い
③用心深い
④常に何かをしていないと気がすまない
⑤仕事は人より速い
⑥昇進すること、人に認められることを執拗に望む
⑦攻撃的で敵意をもちやすい
⑧心にゆとりがない

<チェック方法>
その傾向が強い:2点、少しある:1点、まったくない:0点、
①から⑧までの合計点数が10点以上はA型行動パターンに該当します。
10点以下はA型とは正反対のB型行動パターンです。

<A型の具体的行動>
A型に該当する人の具体的な行動は次のとおりです。
・口答えや批判が多くなる
・歩くのも食べるのも早くなる
・結論を急ぐ
・ミス、失敗を人のせいにする
・些細なことに腹を立てる
・落ち着きがない
・人の話を聞かない
・相手の都合を考えずに話しをする
A型は責任感が強く他人に対して心を開くことが苦手です。
スケジュールに空白があると不安で常に何らかの用事を作り動き回っています。
集中力が高く、休むことに罪悪感を持つこともあります。

<B型の行動パターン>
逆にB型は責任感をあまり感じるタイプではありません。
「適当に」が口癖でとりあえず仕事をこなします。
上司からみるとつかみどころがなく上司を困らせているのかもしれません。
「調子がいいヤツ」などと思われるタイプです。

管理職研修でこのチェックリストを実施すると、
参加者の60%がA型に該当しました。やはり管理職ということもあり、ワークホリック者が多いようです。
部下がA型であれば、エネルギーを放出させることが一番の対処療法です。
部下を気分転換させるために、会議室の机を整理させるとか
会議時の昼食の買い出しを頼むなど行動させることで対処できます。

●部下を追いつめるA型上司
管理職研修では部下の「うつ」を早期発見するのが目的ですが、
表に出ないもう一つの目的は管理職の性格行動パターンを自覚してもらうことです。
部下の「うつ」の原因が管理職自身の問題行動になっているケースがあります。管理職がA型行動パターンだと部下は高いストレスを受けています。
部下は常に監視されている状態が続き、緊張状態が長く続くと体調が悪くなり、頭痛、吐き気などの症状が出現します。
このような状況で部下は上司に相談したいと思っていても、
上司は相談にのるようなゆとりはありません。
当然、部下の様子など気づかないことが多いのです。
これでは上司も部下も共倒れになります。

上司のタイプは、自分への自信と仕事へのスタンスで4通りになります。
①自分に自信を持っていて(人の評価は気にしない)、
仕事は一生懸命やればできると考え実際に仕事ができる。
②自分の生活スタイルに満足し、生き方に自信を持っているので
人に評価されなくても平気。仕事は時の運という楽天的考え方。
③自分に自信がなく上司の評価を気にする。仕事は時の運と考え、
失敗すると人のせいにする。
④自分に自信がなく上司の評価を気にするために、仕事は何がなんでも成し遂げようとする。

管理職で一番多いタイプは①です。
では理想の上司はどのようなタイプでしょうか。

自分に自信を持っていて質問をすればきちんとした答えが返ってくるし、失敗した場合には「時の運だから、また頑張れよ」と部下を励ましてくれる人、すなわち②のタイプです。
ちなみに④の管理職はA型です。

●日常のストレス量を意識しよう
部下のストレスは上司だけが原因ではありません。
日常生活で様々な出来事が起きストレスを感じています。
ストレス量を意識することはメンタルヘルス管理上とても大切です。
部下の一人ひとりの状態を把握することが難しい場合は部下にストレスを自覚させセルフマネジメントしていくように指導することです。